社会に不適合な二人の
火が大好きな人
小学生の頃だったように思います。
私と弟は、家の影で座っていた当時中学生の兄とその友達に頼まれて、居間に置いてあったあるものを一本とって来ました。
私が頼まれた後は弟が、弟がとってきた後は私が、と何度も往復します。
兄と友人は細長いそれを受け取ると、ライターで火を付けて口で吸っていました。
煙草です。
当時の私は煙草というのがどういうものか分かっていなかったようです。
兄はつまり父や親戚の煙草を「盗って」くるように頼んでいたのでした。
さすがに何度も行っては帰ってくる子供を不審に思ったのか、間もなく父に見つかりました。
兄と友人はこっぴどく叱られてしまいました。
ある時、私と弟は、兄とその友達に連れられて森の中に入っていきました。
そこで兄は大きな鉄の盆に落ち葉を集めて火を付けました。
さらに兄はその炎にスプレーを吹きかけて。
「火炎放射器。」
と言って私達に炎を吹かせて見せるのです。
それを見て、私達は喜んでわいのわいの嬌声をあげていたのですが、ちょうどその時近くに来ていた父とその友人に見つかりました。
そこで「山火事になったらどうする」とこぴっどく叱られたのです。
そんな兄は今火を消す公務員になっています。
なにか少し釈然としません。
――
[煙草]…未成年の喫煙は法律で禁止されています。身内のものも盗むのは犯罪です。
[火炎放射器]…可燃性のスプレーを火に吹きかけると、特撮のように火が噴きます。危険です。
[山火事]…場合によっては損害賠償が請求されることも。
作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮