社会に不適合な二人の
素直に渡した方が身のためだ
毎週、ジャンプとマガジンの発売頃には、それらを借りに弟が私の部屋を訪れます。
いつものようにマガジンを借りに来て受け取った弟は、こちらに向かって何かを求めるように手を出してきました。
「なに?その手は。」
「渡すべき物があるはずだ。」
目線の先には、一緒に買った医龍の最新刊がありました。
これも弟が借りていく本です。
「渡すべき物?べき?」
「……渡しても良い物があるはずだ。」
「私としては渡さなくても別に良いんだけどなー。」
「そんなことはない。」
「え、渡した方が良いの?」
「良いと思うよ。」
「そうなのかあ。」
自信満々に言う弟がおかしくてしかたがなかったので、私は素直に本を渡すことにしました。
――
[マガジン]…ジャンプと覇を競う週刊少年漫画誌。ヤンキー漫画が多いのに理論派のスポーツ漫画も多い。
[医龍]…医療漫画。大学病院の教授選挙を舞台として天才外科医がハチャメチャして、凡人研修医が成長する漫画。
作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮