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西暦三〇〇〇年

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 十日後、カプセルが開けられ、ふたりは目覚めた。その日一日は、施設内の特別な部屋で経過観察が行われ、脳波等の検査を受けた。
 
 
 一通りの手順を終えた二人は、またあの説明を受けた部屋で座っていた。そこへ、ジミーとトムが入ってきた。
「お帰りなさい。どうでしたか、時空トラベルの感想は? お楽しみいただけましたか?」
 ジミーの質問に、ケンはその時の記憶を呼び覚ましたのか興奮気味に答えた。
「ええ、とても素晴らしかったです! すべてが驚くことばかりで」
 続いて、メリーが質問した。
「あのー、今あの島国はありませんよね。どうしてですか?」
 ジミーは、二人を代わる代わる見つめながら熱の入った説明をし始めた。
「あなたたちもご覧になったと思いますが、富士山という大きな山がありましたよね?」
「ええ、とても美しい山でした」
「あの山が、あなたたちが訪れてからおよそ百年後に大噴火しました。それに伴い、他の火山も次々噴火し、大地震、大津波と数々の自然災害に見舞われ、そして悲しいことに、あの島はなくなりました」
「え! じゃ、あのすばらしい人たちは!?」
「もちろん、海外のあちこちに移住し、その子孫たちも存在します。
 でも、あのようなすばらしく統一された人々が作る国家というものは、もう二度とできないと思います」
「なんて残念なことでしょう、神様にお慈悲はないのでしょうか……」
「滅亡を遂げる数十年前から、この日本という国は、急に世界中から注目されるようになったそうです。世界中の人たちが日本に興味を持ち、日本を訪れ、日本人を賛美した……
 これこそ、神が消えゆく運命にある日本という国を、世界中の人の目に焼き付け、このような文明、尊敬される民族を忘れないようにと、人々に伝えたのではないでしょうか」
「もしかして、初めの説明の時、この時代の日本を選ぶ決め手と言っていたのはそのことですか?」
「そうです! よく覚えていてくださいました。
 記念すべき最初の旅行先の選定において、自然災害で滅び、世界中の人々が嘆き悲しんだという事実は、実に強いインパクトがありました。
 そうそう、お二人にご報告することがあります。
 今回、人類初の時空旅行の成功を祝して、この『ブレーンマシン』が『ジ・パング』と新たに命名されることに決まりました。
 これで、滅び去った日本国の名前が、永遠に後世に残されることになるでしょう」 


                  完
作品名:西暦三〇〇〇年 作家名:鏡湖