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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「空蝉の恋」 第十八話

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それは、初めから徳永に抱かれたいと願ったのでは決してない。
穏やかな男女の関係で満たされない感情が少しは癒されるかも知れないとの思いだったのだ。
男性と会う約束をしたエチケットとして、下着を新しくする、かわいい洋服を着る、自分の行いはそうした範疇なのだ。

偶然が起こるとしたら、いま妊娠しにくい身体であることは幸運だと思えるだけだ。
徳永はしばらく黙っていた。車のエンジンもかけずに、私をじっと見つめてくれていた。

「佳恵さん、このまま車の中で時間を過ごしましょう。外は暗いので誰かに見られるということも無いでしょう。もうボクたちに垣根はなくなりましたね。とっても嬉しいです」

「徳永さん、ごめんなさい。わがまま言って・・・」

「そんなことないよ。驚いたけど、正直心臓がドキドキしてるんだ。このまま二人だけのところへ行きたいと瞬間考えたけど、きっと佳恵さんの本当の思いじゃないと感じたんだ」

「ええ?私の本当の思いじゃない?」

「うん、なんだか分からなくなって、そのう~ムードに酔って、帰りたくないと言ったんじゃないかとね。違っていたらゴメン」

「徳永さんには私の全部が見えているみたいで怖いわ」

「好きだから、神経が研ぎ澄まされているところはあるよ。でもね、こういう状況で仲良くしても、ものすごい後悔が後から襲ってくる。佳恵さんはその圧迫から逃れるため、ボクと会わなくなってしまう、そう思えたんだ。違うかな?」

徳永が言った、ものすごい後悔という言葉はその通りだと思った。
それにしてもこれほどまでに気遣いが出来る人なのにどうして前の奥様は離婚したのだろう。私の知らないとんでもない徳永がいるのだろうか。

「聞いてもいいですか?」

「うん、何でもいいよ」

「徳永さんはとってもよく女性の気持ちがおわかりになるのに、どうして奥様のお気持ちが離れたのかしら?」

「離婚した理由のこと聞いているんだよね?」

「はい、答えづらいなら構いませんが」

「妻はボクがテニスのコーチを始めた頃から、それまで言わなかったようなことを言い始めたんだ。まあ、嫉妬だったんだよね。女性と接しているから、あらぬ風評も立つんだよ。ボクはその事で大きな反省をして、生徒さんを誘ってご飯を食べたり、特定の人に声を掛けたりすることを止めた。しかし、一度芽生えた猜疑心は消えることなく、自分を追い込んでゆく妻を見て、離婚することが彼女のためだと考えた」

「そうでしたの。女は嫉妬深い生き物ですからね。奥様のお気持ちもわかるような気がします」

この後徳永は驚くべき言葉を発する。