小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

INDEX|21ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

釣り船宿を覗き込んで魚に喜んだり、売店でご当地グッズを買いあさったり、さっき食べたばっかりなのに焼いた貝食べてみたり海岸を満喫していた。
 ああ、特徴的なものがあった。海水浴場入り口にこの街の頭文字「C」の形をしたでかいモニュメントがある。こいつの前で写真を撮るとCの中に海に浮かぶ烏帽子型の岩が入りナイスな観光写真となるのだ。言うまでもないが俺はそういう写真は撮ったことはない。
 ジュンは当然撮ると言い出した。カメラは持ってきた。砂が飛ぶ海岸でも平気で撮影可能な我が愛機オリンパスE-3。ふふふ、面目躍如。ベンも誘われたがツーショットは恥ずかしいと逃げ回り結局ジュン一人で写した。天気もよかったしカメラもいいし被写体もよかったので市役所の観光課に持ち込んだらHPのトップに乗せてくれるかもしれない。うむ、いい写真。
 写真を撮り終えると逃げたベンを追ってジュンは走り出し鬼ごっこに移行していった。ジュンの遊び相手はベンが引き続き担当してくれるようだ。助かる。
 砂浜は見晴らしがいい。逆恨みした組織の奴らが襲ってきてもここならすぐ発見できる。そういった意味ではこれも助かるな・・・海。
 俺は鬼ごっこの二人をしばし眺めていた。
 疲れたのかジュンが不意に立ち止まった。ポケットから携帯を取り出して何か打ち出す。
 と、マナーモードになっていた俺の携帯が震えた。
 メール。ジュンからだ。目の前にいるのに女ってのはまだるっこしい。横にいたジムは反応していないので全員に送ったわけではなさそうだ。
 メールの中身はこうだった
「私のこと好き?」
 心がざわついて唇に渇きを覚えた。ジュンに視線を戻すと何事も無かったかのようにまた海で遊び始めていた。
 うろたえて、けしていい気分ではない自分に自己嫌悪を感じていた。
 俺はなんと返してやればよかったのだろう。
「おい」
 突然耳に差してあったブルートゥースのマイクから三郎の声がした。事態を把握する前に体と精神が戦闘モードに切り替わる。腰を落として振り返る。ジムも続いた。
 海岸通からアメ車がこちらに突っ込んできていた。Dクマで襲ってきた車だ。すでにドアを開け二人飛び降りていた。手にはそれぞれサブマシンガン・イングラムを持っていた。
 空気が震えたのを感じた。。
 同時に男たちの一人がのけぞって倒れた。ついで銃声。超音速の弾丸に撃ちぬかれたのだ。
 三郎の射撃だった。嘘だろ、やつはジュンたちをはさんで俺達と反対側にいる。つまり波打ち際の方で距離は100m以上ある。それを一発で打ち抜きやがった。
 そもそもメールに気を取られていたとはいえあの距離で俺より先に反応しただけでも只者じゃない。いや今わかったことじゃないんだが。
「ベン、逃げろ」
 ベンの耳にもマイクは突っ込まれている。通話は会議モードになっておりマイクをしていないジュン以外全員に聞こえる。勿論今のはジュンを連れて、という意味である。ベンは理解してジュンの手をつかんで防風林の方に走り出した。
 俺はジムに右手に回るように手で指示すると例の鞄のスイッチを入れた。赤いレーザーが発信された。薄暗くなり始めていたからはっきりと視認できる。やつらはさらに二人車から降りてきた。運転席と助手席に乗っていたやつらだ。残りは3人ということだ。やつらと俺達の距離は30mほど。十分射程内だ。奴らがイングラムを撃つ前に俺はレーザーを車の左側の二人に向けてもう一つのスイッチ「引き金」を引いた。
 パパッと短い銃声が轟いて前にいた奴がうずくまった。続けて2回3回と引き金を引く。鞄の中から放たれた銃弾は正確にレーザーの示した位置に着弾し二人目の男も打ち倒した。
 鞄の中身は高性能サブマシンガンMP5Kである。ドイツのH&K社が開発したこいつはアサルトライフルG3と同一のシステムを持つ。こいつが登場する以前のサブマシンガンは短時間で拳銃弾を至近距離にばら撒くだけという代物であった。がMP5は拳銃弾を使う小型アサルトライフルという性格の持ち主。つまり弾丸をばら撒くだけでなく精密な射撃も可能という事だ。KタイプはMP5の中でも最小の物である。
鞄の取っ手の所に安全装置と引き金がついており鞄から出さずに発砲することが出来る。拳銃以上の武装がしたかったがまさかマシンガン片手にまちを闊歩するわけにはいかなかった。そこでシークレットサービスも使っているマシンガン携帯システムを持ち出したのだ。照準は可視レーザー光線「レーザーサイト」で付ける。弾丸の当たる辺りにレーザーが向くようにセットしておき銃を構えなくてもレーザーを相手に当てれば狙いが定まるというわけだ。発射モードは一回の引き金で3発の弾丸が発射されるバーストモードにセットしておいた。1発撃ちのセミオートより命中性が高く、連続発射のフルオートより弾の消費が少ない使いやすいモードだ。
 ジムも発砲した。俺の銃より一段でかい轟音。セレブなリボルバー・コルトパイソンから放たれた357マグナム弾によるものだ。
 最後に残された男の手からイングラムが弾き飛ばされた。さすがジム、無益な殺傷はしない。
 降参すればいいものを男は車に戻って逃走を図った。エンジンはかかったままだったから車内から運転席に滑り込み発進させるまでそんなに時間はかからなかった。止めようと思えば止められたが、まぁいいや、あんな雑魚。とにかくやつらは動いた。こっちも遊んでられないか。
「ジム、ジュン達と店に戻ってくれ。俺と三郎は今夜中にけりをつける」
「了解、先に行く」
 三郎から無感情な声が聞こえた。ジムもジュン達が消えた方に足を向けようとした。すると。
「なんなの、なにしようっていうの」
 マイクからジュンの声がした。あいつはマイク持ってなかったはず。つまりベンのやつを奪い取って、あるいはベンの顔に自分の顔を押し付けてむりやり共有しているかだ。何故か後者な気がした。赤面してどぎまぎしているベンの顔が頭に浮かんだ。
「まだお前の命狙おうってやつらがいるんだ。大元はわかってる、俺達でなんとかする。お前は家で待ってろ」
 ジュンは反発するとわかっていた。しかし内容は俺の予想と違っていた。
「嘘よ、なんか不自然。ケンちゃん私に嘘ついてるでしょ」
「うるせえ、何を根拠に」
 どなって話を切るつもりだったがジュンは鋭く突っ込んできた。
「初めて会った時からケンちゃん私の事知ってたでしょ。偶然会ったみたいな顔してたけど嘘よ」
 俺はプロだ。こんな事を言われても冷静に対処できる。
「どういう事だ」
「私のことお嬢様って知ってたわ。そんなこと一言も話してないのに」
 本当に切れる奴だ。だが俺だって伊達に生きてきたわけじゃない。
「雰囲気と着ている服で予想はつく。俺は素人じゃない」
 間髪いれずに切り返した。しかし勝者は俺じゃなかった。
「服で見分けがつくわけないわ。あの時着てた服、この街の安い店で買った物だもん。まだ薄ら寒いのに、もう夏物の服しか売ってなくて寒かったんだから」
 それであんなノースリーブの服だったのか。
 お前は素人だ。
 親父の声が響いた。
「俺は行くぜ」
 三郎から無感情な声が届いた。俺のドジを呆れているのか。助けてくれたのか。