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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIGGUN1 ルガーP08 別バージョン

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 やつの向かう先はポーカーのテーブルだった。そこにターゲット「鈴木峰子」はいた。歳は48歳。化粧品会社の社長を務めるキャリアウーマンだ。よほど金かけてるのか肌つやがよく歳より若く見える。会社経営の夫を持ちながら自らもバリバリ稼いでいるところから気性も強いのだろうと思われる。外観にもそんな様子が伺われる。
 それにしても俺より先に見つけるとはさすがだ。どうもこいつには何をやっても敵わない。まぁ天才という人種なんだろう。
 三郎はすぐ声をかけず後ろから峰子のゲーム振りを観察していた。俺は邪魔せず、少し離れたところから両者をながめる。どうも負けがこんでいる様だ。イライラとゲームの合間にカクテルをがぶ飲みしていた。
 三郎が動いた。モデルのように優雅に滑るように峰子の横に移動した。
「そのアルコールの飲み方では勝負に差し支えますよ」
 やんわりとした口調で話しかける。気が立っていた婦人は何よとばかりに振り返ったが、思いのほか若く二枚目の顔がそこにあったので表情を少し軟化させた。
「ゲームは楽しく勝負は勝たなければ、ね」
 絶妙の間合いで続ける。突然の王子様の登場に海千山千のおば様も浮き足立った。
「あなたは?」
 それだけ搾り出すのがやっとのご様子。三郎は天使のような笑みを夫人に投げた。
「ただのゲーム好きですよ。僕が・・・代わっても?」
 三郎の申し出に夫人は催眠術にかかったようにうなずいた。それにしても・・・僕ときやがったか。
 三郎が隣に座りゲームが始まった。信じられない光景だった。
 30分もしないで奴のチップは10倍以上に膨れ上がっていた。しかもそのプレイ振りのクールなこと。薄い笑みを絶やさず夫人へのジョークをはさみつつ、引くときはスパッと引き勝負どころでは必ず勝った。そんなことが可能なのか? まぁあいつの事だからワンペアをスリーカードにすり変えることくらい出来るだろう。俺のTポイントも増やしといてくれんかな。
「ゲームはもう十分ですよね」
 三郎は突然切り出した。
「お近づきの記念にディナーに誘ってくださると嬉しいのですが」
 夫人としても願っても無い申し出だったのだろう。さっきからぼうっと三郎の横顔を覗き込んでいた顔がパッと桜色になった。
「ええ、ええもちろんよ! 近くにいいレストランを知ってるわ。最高の料理をご馳走するわ」
 二人は大量のチップを黒服に換金させイソイソと会場から消えていった。
「すげえ」
 おもわず俺の口から素直な感想が漏れた。出来る男の仕事を見た・・・いや見せられた感じだ。
 ここで俺はある事実に気づいた。
 俺、奴に呼ばれてノコノコ出てきたけどなんもしてない。
 奴はなんのために俺を呼び出したのだろう。ボディガードで忙しい俺を。
 そこにメールが来た。前にも言ったが戦う男は常にGショックケータイだ。三郎からだった。
「俺はご夫人の車に送ってもらう。お前帰っていいから。情報が入り次第連絡する」
 と、あった。
 ふむふむ、最初からこうなる予定だったのね。て、つまりなにか。お前の送り迎えのために俺を呼んだのか?!
 怒っても空しいので俺は一人ガレージに向かった。
外から選挙の街宣車の声が聞こえた。市長のようだ。時計を見るともうすぐ20時、規定ぎりぎり。市長も必死か。選挙ってのは大変なものなんだな。ふと思い出したが鍵さんも選挙の応援で忙しいはずだ。そんな時に雑用頼んで申し訳なかったな。選挙終わったら菓子折りでも持っていくか・・・。

 会社に帰るとジュンとベンは既に寝入っているようだった。まだ9時前だぜ?ま、色々あったから疲れたんだろう。ベンの方は女なんて慣れないものに付き合わされてダウンしていると思われる。すまんなぁ。ジムは当然起きて俺を待っていた。
「首尾は?」
 質問に俺はかくかくしかじかと返答する。ジムは笑いながら「まぁあいつならうまくやるだろう」と言った。癪に障るが俺も同じ意見だった。
「例の殺し屋の情報は入ってないか?」
 ジムはタブレットのロックを解除して俺に渡した。
「ラーメン屋の情報網でも名前はわからない。お前が言うほどの凄腕で、しかもラーメン屋に名が知られていないとなるとかなりの大物ということになる」
 殺し屋なんて闇の中に潜んでいるものだ。映画みたいに名が知れていたらあっという間にお陀仏だ。あいつは相当な場数をこなし生き残り証拠を残さず尻尾も捕まれず今に至っているわけだ。A級の殺し屋と言っていいだろう。
「逆にそういう奴と接触した連中を探せば黒幕にたどり着けるな」
 ジムは頷いた。
「ラーメン屋は既にその線で探ってくれている。あの親父さんたちも腕は一流だ。すぐに見つかるだろう」
 駅前ラーメン屋はラーメンの腕も情報収集能力も天下一品だ。ラーメンの方は変な試作作らなきゃいいんだが。
 ジムは俺の顔をチラッと見た。感慨深げにつぶやいた。
「しかし・・・震える殺し屋か・・・」
「殺し屋なんて・・・皆変な奴だろうからな」
 苦笑しながら俺はその場を離れた。
 部屋に戻り堅苦しいスーツを脱ぎ一風呂あびていると三郎からメールが来た。
 鈴木夫人が接触したと思われる組織の名が記されていた。別れてからまだ一時間ほどしかたっていない。仕事はえぇぇ。
 俺はラーメン屋に電話しその名を告げた。親父は笑って言った。
「なるほど・・・あたしも殺し屋の線でちょっと掴んだ事がありましてね。それで繋がったよ・・・」

あくる朝、例のトレーニングを済ませると三郎を除く全員が食堂にいた。三郎は夕べから帰っていないようだ。お疲れ様です。朝飯はハムエッグ、グリーンサラダ、ライスに牛乳という標準的なメニュー。念のため誰が作ったか確認したところジムだった。まずは安心。味は保障しないよとジムは言ったが彼の料理は水準以上だ。
朝から上機嫌に食事するジュンに昨夜何をしていたか聞くとあっけらかんとこう言った。
「ん? ベンとHなことしてたよ」
 ベンが牛乳を拭いた。後「してないしてない」と真っ赤になった。わかりやすい奴。
「初めてだったんだけどベン優しかったし」
 両拳をほっぺにつけて「うふっ」とポーズをとった。
 ベンは「してないしてない」とさらに言おうとしたようだが動揺して声が出ないようだった。どっちが本当の事を言っているかは明らかだ。
 ジュンの言うことが本当なら細かい描写付で真相を語ってほしいものだ。
「お嬢様が下ネタのギャグはやめろ」
「ケンちゃん女の子に幻想持ちすぎ」
 ジュンは変にいたずらっぽく笑った。キャラに合わない会話と表情だ。
 無理してやがるんだろう。
「こいつはそういうギャグについて来れるほど擦れてないんだ。からかうのはよせ」
 真面目な俺の声にジュンは「あー」と声を上げて、ごめんねとベンの顔を覗き込んだ。
 ベンは飛びのいて「いいよいいよ」と顔を背けた。顔をおさえている。ひょっとして鼻血でてる?
「ケンちゃんは何やってたのよ」
 ジュンが話題を切り替えた。
「三郎と出かけてた」
「どこに」
「パークホテル」
「そういう関係だったの?!」
 えーい、女はすぐこれだ面倒くさい。
「情報収集だ。三郎の仕事しだいで事件は解決だと思う」