③銀の女王と金の太陽、星の空
軽いため息をつきながら私がテーブルにつくと、女官たちが部屋へ入ってきた。
「聖華様、おはようございます。」
「おはよう。」
いつも通りの日常が始まる。
女官たちはそれぞれの仕事にとりかかる。
私に朝食の準備をしてくれる者、髪を整え化粧を施してくれる者、寝所の片付けをしてくれる者…。
私が朝食を食べていると、銀河と太陽も入ってきた。
太陽はともかく、銀河とはちょっと気まずい…。
「やっと起きた?珍しく寝坊だね。」
からりと輝く笑顔で、太陽が私の前の椅子に座った。
銀河の瞳は泳いでいる…。
「おはよう、銀河、太陽。寝坊してごめんね。」
私が言うと、太陽は大きな碧眼を半月にして笑う。
「昨日は心身ともに疲れただろうからな。僕も今朝はちょっと寝坊して、兄上に起こして頂いたんだ。」
そして3人で食事を始めたとき、私の髪を結い上げていた女官が小さな声をあげた。
「聖華様、首にアザが…。」
その言葉に、そこにいた全員が一斉に注目する。
「怪我したの?」
太陽が席を立つと、銀河が慌ててそれを止める。
「たいしたことじゃないだろう。」
すると化粧を担当してくれている年配の女官が、銀河の目配せを受けて全て察したようで、笑顔で言った。
「この程度ならカバーできますので、ご心配には及びません。」
(空があの時につけたんだ…。)
私は頬が熱くなるのを必死でごまかして、平常を装った。
(ん?でもこの状況、女官は銀河が相手だと勘違いしてないかしら?)
でも否定することもできないから、どうしようかと考えながらカモミールティーを一気に飲んだその瞬間。
寝所担当の女官が、年配の女官へ耳打ちする声が聞こえ、危うくカモミールティーを吹き出しそうになった。
状況に気づいた銀河も、頬を赤く染めている。
それを年輩の女官は確認すると、意味深に微笑んだ。
ああ、これは完全に相手が銀河だと思われた…。
(…まぁ、それはこれからのことを考えたときに助かるのかもしれないけど…。)
意図してなかったけれど結果として、秘密の関係の隠れ蓑にしてしまった銀河に申し訳なくて、私は軽く頭を下げた。
すると、銀河は軽くため息をついて、困ったような複雑な表情だったけれど、優しく微笑んで頷いてくれた。
作品名:③銀の女王と金の太陽、星の空 作家名:しずか