小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅷ

INDEX|31ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

(第七章)ブルーラグーンの資格(8)-略奪者との対決②



「今、特定の担当って持ってる?」
「えっ……、あの、5部の所掌を……」
「それなら、5部に結構ツテが出来たでしょ?」
「ツテ、というか、私は連絡係のようなものですから」
「そうじゃなくて」
 八嶋は苛立たしげに美紗の言葉を遮った。
「5部の仕事してたら、そこの課長さんや専門官の人たちと親しくなるでしょ。それに、5部の人がどこかに情勢報告に行くときは、あなたも一緒について行くでしょ?」
「でも、私はその場に座ってるだけです」
「5部長にも顔ぐらい覚えてもらえるじゃない」
「それは、そうですけど……」
「いいなあ、そういう繋がりができて。専門官のポストが空いたら真っ先に声かけてもらえる可能性だってあるんじゃない?」
 八嶋の言う通り、調整先である第5部の面々とは、仕事を通じてそれなりに親しくなった。ベテランの専門官から、担当地域に関する事柄や専門官の業務について、教えてもらう機会もたびたびあった。しかし、そういうやり取りが人事的な話につながるとは思えない。
 怪訝な顔をする美紗に、八嶋はさらに尋ねた。
「それに、日垣1佐も、相当顔が広いでしょ?」
「よくは知らないですけど、たぶん、そうだと思います」
「何しろ、未来の空幕長(航空幕僚長)の有力候補だしね。そういう人の近くにいると、お得な話もたくさん来るんだろうな、と思って」
 探るような目が、美紗をじっと見つめてくる。
「お得?」
「人脈の広い人の傍にいるといろんな情報が入ってくるし、人事の話も早いうちから聞こえてくると思うんだよね。それに、日垣1佐は空自だけじゃなくて内局(内部部局)にもパイプがありそうだから、適当に口を利いてもらえば、希望するポストに行けるチャンスだって巡ってきそうだし」
「そんなこと、あるんですか?」
「ついこの間、あったばかりじゃない!」
 八嶋は突然、語調を強めた。声こそ押さえているものの、眉間にしわを寄せた顔は、今にも怒りを爆発させそうだった。