『 聖徳太子に会った話 』
「死ねぇ~~~」
と聖徳太子が言った。聖武の霊は池から拾った。
「死ねぇ」
歴史の恨みを晴らすための霊は存在しているのか。
私は、以後散々にならないように祈りながら、駅までの道の足取りを速めた。
「お前、大統領じゃないからいらない」
とカエルみたいなのが言った。それは人ではなく、血も涙も持たない透明な奴ら分の一だ。
人は奴らには勝てない。肉体を持つ者は、守るべきものがあるからだ。
体が起き上がろうとしないと奴らにやられてしまう。
「これは!!!あなたは英雄です。これから、長になろうという者!!」
「私の未来は定められているのです。長になります、どこでも私が長なのです」
「へへぇ!!もう、首でもなんでも持って行ってください」
「頭を深~く下げなさ~い!!私の言うことを聞くのです」
天才的!聖徳太子君は、とん、という音を立ててそこから飛び降り、走り去っていった。
時々、どこかで聖武が揺らしている。それもこれも、どれも、カエルがやったことになっている。正しいのかどうか、わからない。
あの日、飛び降りたのが悪いのよ。
私は腹を括られたような気持ちで、痛む胸を押さえた。人は笑い、そして泣いている。
私の心は痛まない。そして、そのことできっと今日も、笑って過ごしているのだった。
作品名:『 聖徳太子に会った話 』 作家名:みゅーずりん仮名