ツイスミ不動産 物件 X
2週間が経過した。
なんと極上物件が見付かったのだ。
再来店した夫婦が開口一番に「どこにあったのですか?」と質問する。紺王子は「徒歩5分のところに」と胸を張る。
「えっ、そんな近場に」と驚く夫妻に、「まずは現物確認しましょう」とエスコートする。そして着いた所は市営駐車場だった。
「あれです」と紺王子が自信満々に指を差す。
その先にあったのは車体に八季庵号と銘打たれたピカピカのキャンピングカー。
旦那は「なんじゃらほい?」と首を傾げ、その後「この手があったのか」と頷く。妻は「日本の八季を味わうためには、こちらが動けば良いのね」と笑みが零れる。
そしてその目からは鱗が一片二片と落下。
これを目視した不動産屋二人、「この終の棲家で日本八季巡りの旅をどうぞ」と深く一礼する。
だが一番肝心なことが。それを察してか夫人から「ところでお値段のほどは?」とじんわりと質問がある。
これを受けクワガタは自信満々に「お値打ちの、680万円で〜す」と言い放つ。
「うん、リーゾナブルだ」と目を輝かせる夫に対し、妻は「八季庵号に住んでしまえば、主人と24時間かける365日、ずずっと一緒なのね」と少しばかり顔を曇らせたのだった。
さてさてみな様、I夫妻が終の棲家として八季庵号を購入したかどうかは個人情報です。だから明かせません。
ただ時に、日本の八季を巡る旅にこの身を埋没させたいと思いませんか。そのための住まいとして、八季庵号は一つの選択肢になり得るかも、ね。
作品名:ツイスミ不動産 物件 X 作家名:鮎風 遊