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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第五話

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夫は確かに年末年始の旅行を申し込んでいた。
同行者の欄に私の名前があったので家に電話したということだった。
夫へ携帯で電話すれば済むことだったのに何故自宅へ掛けたのかこの時点では解らなかった。

「主人の携帯へは繋がらなかったのですか?」

「はい、何度かお掛けしたのですが、留守電になっていてお返事が戴けないものですから、ご自宅に掛けさせていただいたんです」

「そうでしたか。仕方ありませんね。それでご用件は何でしょう?」

「はい、ホテルですがツインのお部屋でご予約いただいたのですが、当方の手違いでシングルが二部屋になってしまったんです。それで、ご用意が出来る別のホテルへ変更をお願いしたくて確認のお電話を差し上げた次第です」

「どちらのホテルになるのでしょう?」

「場所はタクシーで十分ほどのところになりますが、ワンランク上のデラックスツインでご用意させて頂きますので、ご理解いただけませんでしょうか?」

「わかりました。主人には私の方から伝えておきます」

代理店から聞いたホテルの名前をメモして、夜寝る前に夫へ電話をした。
何故夫はこの話をしなかったのだろう。
内緒にしておいて驚かせるつもりだったのだろうか。

「あなた、さっき旅行代理店から連絡があって、ホテルが変わったことを聞きましたので、お知らせしようと電話しました」

「ええ?何?ホテルが変わった?」

「年末年始のツアーのホテルが向こうの都合で変更になったとの知らせよ」

「そうか・・・」

「何かおっしゃることは無いの?」

「いや、お前に内緒にして・・・驚かそうと考えていたから」

「まあ、そんなこと。本当ですか?」

「じゃあ、誰と行くと思っているんだ?」

「そんなこと思っていませんよ。ご一緒出来ることは嬉しいですわ。ねえ、洋子も誘って三人で行きましょうよ」

「うん、そうだな・・・そうするか。お前悪いけど電話して三人に変更しておいてくれないか?」

「はい、そうします。それと余計なことですが、私テニスを始めようと思いますの。お友達に何度も誘われていて断れなくて。続くかどうかわかりませんがお話だけはしておきますわ」

「ふ~ん、いい身分だ。怪我しないようにしろよ」

「そうね、気をつけますね。では、また連絡します」

何か不自然な感じを受けたが、ともかく年末年始は家族旅行をするということに決まった。