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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『 MOKUROMI-KYO ~  6 ~ 』

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5.

その中で、少しずつ奇妙な現象が生じるようになっていた。人間だけが考える事柄ではない何か秘密か法則のようなものが、関係するのではないか。しかし、研究者でもない私が知り得ることは少ないために、物理的な証拠を見つけ出すことは難しいように思えた。
そして、歩き回ることが多くなった私の顔も知られるようになったのか、パトカーが様子を見に来ることもあった。調査したい内容が、あまりにも表立ってはできないことであるので、不審人物に見えないように誤魔化しを演じる必要がある。

私は洋服屋へ行き、多少の冒険をして、人から不審な目や不快な表情で見られることのないよう気を配るようにした。姪の話を思い出すにつけ、それが本当であるならば大変なことであるだけでなく、金になる話であるので、誰彼構わず殺される可能性を秘めていた。そのような話は誰でも乗りたくなる話であろうが、人としてどうなのか。一人ずつ聞いて回った話の内容は、次のようなものであった。

まず、鍵は転職活動である。これは、就職活動でも同じかといえば、そうでもない。その期間すべてを通じて、あり得ぬ現象が生じるという。数日後から、謎にお腹が膨らみだし、それが数回続く。それから、その後、生理というよりも産後のひだちのような出血が続いたという人も数人いた。また、他の証言では、胃痛や吐き気を感じたという人もいて、誰が考えても、それはつわりと同じ現象だったと思われる。色々な話を思い出すにつけ、これは、社会がより良いものになるために、会社が存在しているからで、そういった事情を女性に呑めという国なのである。どこまでも足下を見られている感があるが、金を稼ぐことは男性の仕事であり、所詮、女性には何も出来ないだろうという軽蔑を感じる者が誰も居ないのは不思議である。


ある日のことだが、女性から朝起きると顔が違う日があるとの報告があり、私は急いで出掛けることになった。「これが昨日の私ですよ」と女性は目の端をつり上げて私にその写真を差し出した。デジタル製のカメラでは、すぐに修正が掛けられてしまい解らないのだという。私は、その日のコンディションによって違うのではないかと言おうと考えたが、確かに数年ほどの時差があるように感じられるその写真を前には、言いかねた。では、昨日のあなたはさておき、明日のあなたと会い、改めて判断させて頂きたいとの話をしたが、「でも、もう既に遅いんです。きっと、私の子供が何処かにいます」と彼女は涙を浮かべ、その店を出て行こうとした。それを引き留めることは、彼女の死を意味している可能性はあるのだろうか、と私はその背中を見つめたが、声を掛けることはしなかった。

その話が本当だとして、常に“女性はヒステリックな生き物である”と病院を薦めるだけが最善のアドバイスだといえるのだろうか。今もしかして私は、生物の大変な謎について考え始めているのではないか。少し、頭が混乱しているような気がして、先ほどの女性の発した言葉について、忘れるべきなのではないかと、私は思うことにした。

ところで、私は歩いた先で似た人物に出会うようになった。似た人物とは、私と容姿が似ているというだけのことであるが、気になるとどれだけでも私のような人物が居る。PC上でのシミュレーションと同じく、頭の中で髪型や体型を変えてみるだけで、同一人物では無かろうかという私のような男は10名以上もすれ違っていたことになった。名前を知る者も居るが、ほぼ袖摺り合わなかった人たちである。この間の話を聞き流したからではないかとの結論に達するまでは、2週間ほどかかった。人の話を真に受けていては、正気を保てないが忘れてしまうわけにもいかない。それで、再度、連絡を取ることにしたが女性から連絡先を聞いていなかったことを思い出し、私は陰気になった。その女こそがキーワードであったのに、もう会えない。女性の言うことが真実であったとしても、それは神の領域であり、人間が解決できることではないのではないか。それだけでも伝えれば、私は楽になるに違いなかった。

大抵の場合の悪事には、誰か大物が関係あるとされているが、その黒幕を見つけるまでには時間が掛かる。しかし、既に答えは提示されていた。その答えを頭に浮かべないために訓練を重ねる必要があるかも知れなかった。

それから、私はそれを神のせいだと考えることにした。何にせよ、神はどこにでも存在するものであり、それが人間を支配しようとしているのである。つまり、それらはかつて神として存在していた人間の霊であり、現在も人に寄生し、肉体を喰らい精神を乗っ取ることによって存在し続けようとしているのだ。

では、それを寄生させる肉体という媒体が必要である。人に指示を与えているその声の主をすべて捜し出すことで、自ずと犯人は割り出すことが出来る。ほぼ、それだけが犯人のすべてであるが、もし、あんたの好きな人生をあげると言われてもそれを断ることの出来る人はいるか。

しばらくすると、出会った女性すべての話が私を落とし込めるものであったような気がし、私は呑気に過ごすようになった。そもそも、神の犯罪に関して人が声を上げて泣こうが喚こうが嘆こうが、どうにも出来ないのではないか。女性に生まれたのが悪いのであり、男性の私は被害を受けずにすんだことに胸を撫で下ろしていた。だが、思い出す必要のあることがあったような気がし、ごくたまに遠くにある記憶を探ったが、あまりにも薄れてしまっているそれらは私を苦しめることはなくなっていた。