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カラスよお前は……

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 ここの所、庭の隅に置いた猫の餌を目当てにカラスの姿を見かけるようになった。人が見ていない時に餌を喋んでいるらしい。
 どうして、そう思うのかと言うと、猫の姿を見かけ無い時でも入れ物に入れた餌が減っていたからだ。
 最初は、ゴミの袋を破って中の残飯を漁る野良猫に困り、その傍に猫の餌を置いた事が始まりだった。
 数匹の野良猫はゴミを漁るのを止めて餌を食べる様になった。ここで目的は達成されたのだが、その副産物として、猫の餌を他の動物も狙うようになった事だった。その代表がカラスだったという事だ。
 猫の食べ残した餌を狙って朝方に来るのだ。朝に来るカラスだから「明烏」と言いたいがそんな粋なものではない。
「カアーカアー」と朝から鳴いて人の安眠の邪魔をする。猫は黙って食べて行くので世話なしなのだが、鳥と言うか特にカラスは煩くて仕方ない。
 カラスが食べ散らかした後を色々な鳥がやって来る。雀を筆頭に、椋鳥、ヒヨドリ、オナガ等色々な鳥がやって来ては猫の餌を喋んで行くのだ。当然鳴き声も聴こえるが、カラスほど人の感に障りはしない。
 それが最近、そのカラスに鳴き声が二種類ある事に気がついた。始めは単に二匹のカラスが来ているのだと思っていたのだが、どうやら違うらしいと気がついたのだ。
 カラスに詳しく無い人の為に一応書いてみるが、都会に生息しているカラスには基本的に二種類あり、「ハシボソガラス」と「ハシブトガラス」という種類のカラスが居るのだ。
 この二匹の違いは明瞭で、クチバシが細く長いのが「ハシボソガラス」で逆に短く太いのが「ハシブトガラス」である。
 元々、人里に住んでいたのは「ハシボソガラス」で、これは大体大人しいとされている。かの「七つの子」のカラスはこの「ハシボソガラス」だと言われている。
 元々は山に住んでいたのが「ハシブトガラス」で、これは元来狩りをするので攻撃的で気が荒いと言われている。
 昔は、住み分けられていたのだが、山の環境が悪くなり餌が少なくなった「ハシブトガラス」は山里に降りて来たのだ、そうして大人しい「ハシボソガラス」のテニトリーに侵入したのだ。
 大人しい「ハシボソガラス」は逆に山に棲家を求めたり、「ハシブトガラス」の来ない地域に避難したりして暮らしている。
 あなたの街はどちらのカラスが居るか見て見るのも面白いかも知れない。

 ある日の朝、カラスの声で目が覚めて、庭を覗くとカラスが猫の餌を喋んでいた。元々人の姿を見ると一時的に避難するので、カラスには構わずガラス戸を開けると、案の定驚いたカラスは飛び立ってしまった。
 普通ならそこで終わりだが、飛び立ったカラスは戻って来て塀の上に止まってこちらを見ているのだ。
「なんだこいつ?」
 そう思って近づいても逃げる素振りをしない。『図々しい奴」だと思ったが、逃げないのでは仕方ない。荒っぽい事をしてカラスに逆襲されるのは御免だ。
 そのカラスのクチバシが短くて太い事に気がいた。
「こいつ『ハシブトガラス』か、どうりで図々しいと思った」
 そう呟くと、カラスは首を傾げて俺の言葉を聴いているような素振りをした。
 カラスは俺が家の中に入ると直ぐ様餌を喋み始めた。
 別な日の事である。空が曇って「雨模様」の朝だった。その日もカラスの声が聴こえた。だが何か違う感じなので庭に出て見ると、カラスが一羽、猫の餌を喋んでいた。その姿を見て何時も来るカラスとは違うと直感した。喋んでいるクチバシが長がかったので「ハシボソガラス」だと思った。躰も「ハシブトガラス」に比べるとスリムというが細い。
 俺の姿を見て少し驚いた様子だったが、最後まで餌を喋んでから俺の姿を目に止めた感じだった。それから大きく首を縦に動かすと、羽を広げて飛び立って行った。俺には礼をしたように感じた。
 それから注意深く観察していると、「ハシブトガラス」が来てる時は「ハシボソガラス」は決してやっては来ない。
 だが「ハシボソガラス」が居る時に、たまにだが「ハシブトガラス」がやって来て「ハシボソガラス」を追っ払ってしまう事がある。この時は何故か「ハシブトガラス」を憎いと思ってしまう自分に気が付き可笑しくなった。
 猫の餌を取られる事には違いが無いのに……。
作品名:カラスよお前は…… 作家名:まんぼう