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HAPPY BLUE SKY 婚約時代4

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1−1
カーテンの隙間から差し込む朝の光で俺は目が覚めた。ベッドの中で体を伸ばし、手を動かしてアラーム時計を見た。
「‥‥11時か。よく寝たな。あ、一美とコタは帰ったんだな。親父さん入国してるもんな。そのままお泊りってワケにはいかんな。そんなことしたら、親父さんに結婚の許可を取り上げられるよ。さて‥起きるか」
俺はベッドから出て、バスルームに向かった。

私は昨日‥クゥが眠ってからマンションに帰った。マンションのドアを出る時は、コタが玄関の中で踏ん張った。コタもお泊りがしたかったみたいだ。私だってホントはお泊りしたかったのだが、また父の裕次郎さんが入国していたのでそうはいかなかった。
私に味噌汁のお椀を突きだして父の裕次郎さんは言った。
「昨日は何時に帰って来たんや?コタロウが朝の散歩の時に眠そうな顔して歩いてたぞ。そんな遅かったんか?嫁入り前の娘が遅うまで何してるんや」
「エエやないの!2ヶ月半ぶりにフィアンセが帰国したんだぜ。大目にみてあげたらいいじゃん。一美ちゃん俺にも味噌汁のお代わりちょうだい」さとがフォローしてくれたが。
「申し訳ございません。以後気をつけます」
私は軽く頭を下げて謝った。この人は反抗的な態度を見せたら怒るから。今週末、結婚式関係で動くからね。私の謝罪を見て‥
「まぁ‥仕方ないな。でも日付変わる前には家に帰って来るんやで」
と言った裕次郎さんだ。横のさとは味噌汁を噴いた。それぐらい驚いたってことよ。私も心の中で驚いたけど。以前ならあり得ないわ‥口と同時に手が飛んでくる人だったのに。
剣流会に出勤して、中村先生と藤村理事長先生にこの事を言ったら驚いていた。そしてお2人はこう言った。
「ホンマかぁ?以前の裕次郎さんやったら‥あぁ!嫁入り前の娘の顔を叩いたらあかんな。だからその言葉が出たんちゃうか?君に手を挙げたらフィアンセのクゥ中佐に怒られるしな」
「クゥ中佐は裕次郎さんに、タンカ切ったもんな。【もう貴方には一美とさとに手を挙げさせません。手を挙げたら俺が完全阻止します】って言ってさ。その時のクゥ中佐はさすが陸軍中佐だな!凄味があってドスの利いた声でさ‥カッコよかったよ」
「だからですかね?裕次郎さんがそんな事を言ったのは」お2人は同意の意味で私にうなづいた。
夕方‥外回りが終わり、モノレールの改札を上がったところで車のクラクションが鳴った。クラクションを鳴らした車はクゥの愛車だった。また何てタイミング良く私のスマホが鳴った。着信は剣流会オフィスだった‥
「そうですか‥じゃそのまま直帰します。お疲れ様でした」
クゥが私の顔を見た。
「館長も顧問も理事長も今からNATOC上層部と会食で、オフィススタッフも定時に帰るから、立野営業部員もそのまま帰りなさいって」
「それはラッキーな事だ。神様は俺にプレゼントくれたか?2ヶ月半働き尽くしたご褒美かな」クゥは言いながら‥笑った。
「かもぉ。」私も笑った。
一旦、私はマンションに帰ってコタを連れてクゥの車に乗り込んだ。コタはクゥの愛車に飛び乗り、ドライバーズシートのクゥの顔をペロペロ舐めた。それも尻尾を振りながら‥
「はいはい!昨日は遊び足りなかったのか?今から自営ドッグランに行くかぁ?コタ」この声にコタは、クゥの顔をまた舐めだした。
クゥの車で走る事‥10分足らずで自営ドッグランに到着した。クゥは先に降りて、倉庫にある配電盤をONにしたら、次々に外灯が点いてクゥの声が聞こえた。
「一美ぃ!コタ連れて来ていいぞ」
クゥがフェンスのドアを開けてからは、コタは1人でボールを投げては追っかけて遊んでいる。そのボールはバウンドが良く、走りが好きなコタにはもってこいの遊びだ。しばらくはその遊びに興じているだろう。
「コタ‥30分は遊ぶわよ。また中にコタの大好物のチーズを仕込んだでしょう?クゥパパ」
「うん。昨日はすまん‥俺ディナー食ってから爆睡したんだな。一美にベッドに誘導されたのも覚えてませんでした。もちろん帰ったのも」
「うん。コタが遊ぼうってクゥパパの顔舐めても、前足で腕叩いても起きませんでした。帰る時に玄関の中で踏ん張ったのよ!帰らないって」
「申し訳ございませんでした。コタさんは今ワビ入れさせてもらったけど、もちろんコタママにもワビ入れますよ。後でな!コタ遊んでる間に入ってみるか?防犯装置作動させてるから大丈夫だ」
「うん。行く行く!」私達はテラス窓を開けて中に入っていた。
この前来た時は、先月の中旬だった。私とボンバード顧問の父上と育て親の執事さんとコック長さんと見に来たのだ。クゥは海外公務中で4人で来たのだ。
そう‥ここは新居なのだ。
実家のボンバード家に住む予定だったが、クゥ中佐もボンバード顧問も私もNATOCのファイン支部に勤めていて、実家からファイン支部へ車で通勤できなくもないが、車で片道40分かかるのだ。ボンバード顧問と私は車で40分の通勤でも大丈夫なのだが、クゥ中佐はそういかない。
今は防衛大の仕事をしているが、諜報1班から緊急の呼び出しがあるかもしれない。車で40分の距離では対処に遅れる可能性がある。それを考えた父上である ボンバード顧問は今住んでいる家を出て、ファイン支部の近くにあるボンバード名義の土地を整備し、家を建てる事にした。今住んでいる家の管理は親族に管理を任せることにした。その工事が施行されたのが、9月の初めだった。
それから3ヶ月が経ち、外装はほぼ完成して、今は内装を工事していた。私が先月見た時は、本館(ボンバードの父上と執事さん・コック長さんが居住する)の内装に取りかかっていた。
本館のリビング奥のドアを開けると、別館に繋がる渡り廊下がある。その渡り廊下の先が私達の新居だった。クゥが新居のドアを開けた。
「うわぁ‥すごく進んでる!この前来た時はまだ壁のクロス張りしてたのに!」私は思わず声をあげた。
「あぁ‥そうメールに書いてあったな。あれから2週間ぐらいか?」
「うん。部屋らしくなったなぁ‥もう生活できちゃう?」
「できるかもな。何なら今日ここでご宿泊するか?車の中にシェラフあるぞ。取ってこようか?」笑いながらクゥは言った。
「してもいいけど、やっぱりやめとく。準備が整ってからのお楽しみにしておくよん。その方が喜びが深いでしょ」
俺は一美の肩に手を回した。
「うん。準備が整ってから新生活スタートの方がいいさ。それまではこうして、一美と2人で時々新居見に来て楽しむさ」
「だね!あぁ‥遊びに飽きたワンコがこっち向いてるよ。ボクも仲間に入れろって。乗り込んでくる準備してる」
コタは嬉しそうに、ドッグランからリビングの窓に向かって走って来た。
作品名:HAPPY BLUE SKY 婚約時代4 作家名:楓 美風