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HAPPY BLUE SKY カッジュのバースディ

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カッジュが部室を退室した‥その後です。



俺はカッジュの額を触って熱を確かめた。部を退室したカッジュは気が緩んだのか、その夜から熱を出した。またコタロウはカッジュが心配なのか、ケージにマズルをつけて【キュンキュン】と鳴いた。カッジュの様子をミラドが診に来てくれた。片割れのさとはキッチンで調理中だ。カッジュが熱を出した時に食べれる料理を作っている。

「このお嬢さんは高熱タイプかな?ふたごの弟君」
キッチンから鍋を持ったまま、さとが出てきた。
「はい‥オイラ達は2人とも高熱タイプです。カッジュは俺よりも熱が高いです。関節も痛がります!口の中は口内炎ができモノが食えません。だから俺が今、アップルの擦り下ろしたのとリゾット作ってます」
「了解‥点滴しようか。解熱剤注入してやろう‥クゥさん!これカーテンレールに引っかけて。さとぉ!手伝え」ミラド先生の指示で俺達は動いた。

私はカーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。手を伸ばした時に柔らかい物に触れた。目を開けてみると、どうやらそれは頭らしい。私のベッドに頭をつけて眠っているようだ。その頭が動いた‥クゥだった。
「起きたか。気分悪くないか?まだ頭痛いか?カッジュ」
「うん。ずっと‥居てくれたの?クゥ」
クゥは私の額に手を当てて、自分の額で熱を測った。
「良かった‥点滴が効いたみたいだ。ミラド先生が3日間養生しろってさ。4年間の疲れが出たんだろうって。ゆっくり休めよ」
クゥは私の頭をまたあの大きな手で撫でてくれた。

次に目が覚めた時はさとの顔が見えた。
「クゥ兄貴は仕事に行ったよ。クゥ兄貴が帰って来るまでオイラが看護しちゃるけん。ほらお粥炊いたで。卵だよん‥かっちゃん好きやろ?後はすり潰したバナナだぃ」
「うん。ありがとう‥ねぇ。ずっといたの?あの人」
「うん。点滴終わってからもミラド先生からレクチャーしてもらって、明け方まで起きてたぞ。7時半に俺と交代して支部に出勤したよ」

「エ‥お熱が出たんですか?カッジュ」
デスクに書類を受け取りに来たアーノルド少佐が言った。
「うん。昨日の支部を退社してから様子見に行ったら、赤い顔しててさ。額に手を当てたら熱くてよ!ミラド先生にすぐ電話しました。で3日間の養生となりました」
「それはそれは‥あぁ!帰りにカッジュの好きなアイスを持って行って下さい。もちろん寄るんでしょう?カッジュのパパ様」
アーノルド少佐はワザとそう呼んで、笑いながら中佐室を出て行った。
「あ‥アイツぅ!カッジュが居なくなったら、カラかいも大胆だな」
中佐室のドアの向こう側でまた部員の笑い声も聞こえてきた。あ‥アイツらぁ!俺は手をワナらせながら言った。

「うわぁ‥スッゲェ!」
さとが俺の持っていた紙袋の中身を見て声を上げた。カッジュは1時間前に薬を飲んで今はよく眠っているらしい。
「部からの差し入れだ。好きなスィーツ食べ放題で早く復活しろとの伝言付きだ。加減して与えてくれよ。あぁ‥さとの分も入ってるからな!カッジュに言っとけ」
「うん。アイツすぐに独り占めするんだから」
さとはまたカッジュにそっくりな笑顔で笑った。

さとは俺と交代して、陸軍病院に行った。正式採用は来月の1日だが、それまでは非常勤医師としてミラドの元で働いた。主に夜勤でコキ使われてるらしいが、陸軍病院も医者不足なのが現実だ。さとの投入はラッキーだとミラドは喜んでいた。頑張って働けよ!さと‥
カッジュは部からの差し入れのアイスクリームを喜んだが‥‥
「これだけぇ?」
カップの半分を出したら、不服そうに俺の目を見た。
「週末にどこ行くんですか?おなかの調子が悪いと楽しみも半減になりますよ。それでよければお食べになって結構です。俺1人で食うから」
「い‥イエ‥これで充分です。彼氏様」
カッジュはアイスクリームを食べだした。

「もぉ‥私はそんなに信用がナイの?」
冷蔵庫のドアの前にメモが貼り付けてあった。クゥが書いてマグネットで貼り付けたな!メモにはこう書かれていた。
「明日来てアイスの在庫チェックするぞ」だ‥
「わかったわよ!食べなきゃいいんでしょう。食べなきゃ‥」
私はキッチンの壁に吊るしているホワイトボードに目をやった。今週の土曜日に私は25歳のバースディを迎える。長期公務が終わった時に、私のバースディを2人でお祝いしようとクゥと約束した。自分のバースディを祝うなんて随分としていない。友達がバースディ・パーティを開いてくれると言っても、私は練習や試合で参加できなかった。だから‥クゥとの約束がとても嬉しかった私だ。

コタロウがケージから出てきて私の手を舐めた。
「‥‥嬉しいね。お祝いしてくれる人がいて、私は幸せなんだね」
コタロウは同意なのか‥尻尾を振って私に答えてくれた。


数日後‥

「‥でクゥ中佐は有給休暇を申請してお休みなのか?」
部室でブータレているのは、マブダチのミラド先生だ。また‥さとも引っ張って来ている。最近この組み合わせで部室に遊びに来ている。さとは昼休みでもやる事が一杯なのに、ミラド先生に腕を掴まれたらそのまま、引きずられて諜報1班の部室に来る。
「俺にコタロウを預けて行きました。ま‥土産に期待せよですかね?コタロウも」
その声に部室の先輩達の笑い声が響いた。アーノルド少佐はデスクに両肘をついて言った。
「はいはい‥クゥ中佐の有休休暇申請には部長も喜んでました。その調子で消化してくれたら何にも言う事はナイと!ついでに結婚してくれんかな‥と言ってましたよ」

ミラド先生はその時に思いっきりニタッと笑った。そのミラド先生・スマイルに部員全員顔が引きつったそうだ。
「な‥おまえらどう思う?カッジュのバースディパーティでさ!ヤツは行動に出るかどうかカケないか?俺は出る!にビール1杯だ」
部室で先輩達がカケに臨んだことは言うまでもない。さとはミラド先生と先輩達全員に口止めされた。しゃべったら‥部室に出入り禁止とまで言われたそうだ。部室でそんな事が起こってるなんて思いもしない私達だった。

俺とカッジュは、都心のレストランに来ていた。カッジュは俺がプレゼントしたパステルブルーのワンピースを着て同色のストールを羽織っていた。レストランの男性客がカッジュが入って来た時に、一斉にカッジュを見た。カッジュはそれぐらい綺麗だった。本人はこういうシーンは慣れてないから、少し恥ずかしそうだった。ここで‥俺がしっかりエスコートをしなければ。カッジュの前に腕を出して‥
「行きましょう‥カッジュさん」
「はい‥クラウスさん」
赤くなりながらも、俺の腕を取ったカッジュだった。

俺は今日のデートコースプラン程頭を悩ました事はなかった。普段のデートなら、こんなにも頭を悩ませる事はないのだが。カッジュと交際を始めてもうすぐ半年になる。俺なりに考えていた事があった。今日はそれをカッジュに伝えようと思った。またミラド達が言うように俺は今日行動を起こそうとしていた。目の前のカッジュは、フレンチ料理を満足げに堪能している。美味しかったのか‥口をナフキンで押さえて笑っているようだ。
「そんな美味しいの?」
「はい。シュリンプ大好きですから‥このソースも絶品で」
「それはよかった。俺のも食べるか?はい」