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HAPPY BLUE SKY 退出までの2週間 2

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「俺は【KARATE】です。黒帯5段です!俺も世界選手権目指します」
この言葉に俺達はまた驚いた。
「機会があれば、ブロック割りをご披露しましょう。カッジュが電柱なら、俺はブロックを5枚割れますよ。素手でね‥あぁ後は剣道も有段者です。姉ちゃんが4段なら俺は3段です。秋の昇格試験で4段に追いつくから!姉ちゃんよろしくね」
智志君は、カッジュとそっくりな顔で笑った。またその笑顔もそっくりだった。


智は一旦、剣流会のオフィスに行った。帰りにまた一緒に帰る約束をした。18歳の時から6年間‥智とは顔を逢せた事がなかった。私は高等部を卒業と同時に神奈川県に上京した。父から離れたい一心で、スカウトされた県警の中で一番遠い場所を選んだ。警察学校を卒業してからも、私は実家に帰る事がなかった。長期の休みも帰らなかった。智は私が上京すると、大学部に進学が決まってたのに、父に内緒で医大を受けた。医大を合格し、智もすぐに北海道に上京して、私同様に6年間実家に帰る事がなかった。

姉は私達が17歳の時に家を出た。姉には交際している相手がいて、結婚も考えていた。そんな事は父が許すはずがない。父は自分が選んだ相手と姉を結婚させようとしていた。姉は私達に置手紙を残し家を出た。私がN国に入国してから、姉に連絡を取った。ポリス時代に独身寮に姉から手紙が届いた。

クゥは今日は気を遣ってくれたのか、マンションには来なかった。
「6年間離れていたんだ。智君と積もる話もあるだろう!俺はいつでも来れるからさ」
帰る時にキッチンで私にこう言ってくれた。また智も中村先生のご配慮で同じマンションのワンルームに住む事になった。荷物はまだ日本から到着していないらしい。今日は私の家に泊まる事になった。

6年ぶりに二人でキッチンに立ち料理を作った。
「いい人だね。あの人‥肝っ玉据わってて、でも優しい。中村先生の言った通りの人だね。一美ちゃんの彼氏様!俺は部室に行く前に、理事長先生から聞いてたんだ。一美に彼氏がいて、今は超ラブラブだって」
私は智の言った言葉に顔が赤くなった。このぉ‥6年振りに逢った姉をカラかうか?
「顔赤いよ‥そういう所は変わってないね。あのさ‥クゥ中佐たちの前では言わなかったけど、一美ちゃん同様に俺の所にも親父から連絡があったみたいだ。俺はオペのアシスタントに入ってて、医局にいなかったんだ。数回あったけど、タイミングが悪かったのか‥出れんかった。医局の先輩達が名前を聞いても言わんと切ったんだ」
「そうなんだ。ねぇ‥さとが考えている事と私が考えている事は同じかな?逢って話をした方がいいの?」
「たぶん一緒だよ。俺‥その辺はまだ子供かもしれない。逢いたくないんだ‥あの人に」
「うん。わかる‥私だって逢いたくないよ。逢ったら‥また殴られるよね」
「たぶんね。あの人は口より手が出るんだ。俺達は18歳まで、躾と称して殴られて育ったんだ。よく俺達グレなかったね‥大きい姉ちゃんが居たかららだよね」
「うん‥大きい姉ちゃんがいなかったら、私もアンタも非行に走ってました。瑞穂姉ちゃんのおかげだよ」
「うん。かっちゃんとこにも手紙が来たのか?」
「来たよ。翔ちゃんの海外転勤について行ったんだね。K国だったね」
「K国の都心に住んでるって。今もK国に住んでるのかな?かっちゃんは、こっちに来てから瑞穂ネエに逢ったの?」
「ううん。逢ってないよ‥カードはもらったけど」
「俺ももらった‥家族4人で幸せそうに笑ってたね。逢いたいな‥瑞穂ネエに」
「うん。瑞穂ネエ・翔ちゃん‥甥っ子・姪っ子に。一度連絡取ってみようか?」
「うん。逢いたい!親父の事が片付いたら、連絡を取ろうよ!お‥デキたで。さとちゃんお手製肉じゃが!かっちゃんお手製コロッケ!食べよう食べよう」
「うん!」私と智は夕ご飯を食べながら、6年間の事を話した。

翌朝‥智は剣流会のオフィスに出勤した。私も後3日で部を退室する。まだ少し引継ぎが残っている‥頑張って終わらさなきゃ!
「コタロウ!お仕事行ってくるね。またお昼に帰って来るよ」
コタロウは元気な鳴き声で返事をしてくれた。私は玄関のドアを閉めて駐輪所に行った。自転車のバスケットにリュックサックを入れ、パーキングの出口で左右を確認してから坂道を自転車で下りた。その時は気がつかなかったのだが、物陰から私の事を見ていた人物がいた。

後ろからクラクションの短い音が聴こえた。振り返ると‥クゥだった。
「おっはよう!カッジュ」ドライバーズシートの窓から手を振ってくれた。
「おはようございます!昨日はごめんなさい‥よかったらまたご飯食べに来て!コタロウが寂しがってたよ」
「はいはい‥また行くよ。じゃ‥先に行くぞ。気をつけて自転車乗れよ。カッジュ」
「うん。また後で!」
私は右手を小さく振った。クゥもドアーミラー越しにうなづいてくれた。

カッジュが後3日で退室する。またカッジュの仕事をツィンダー・ヨルに引き継いだので、カッジュは引継ぎの業務に忙しそうだ。コーヒーのお代わりが欲しかった俺だが、自分でキッチンに行った。
「言って下されば、良かったのに」後ろからカッジュの声が聞こえた。
「イエイエ‥お忙しいのに。コーヒーぐらい自分で入れるよ。これからは自分でしないとな‥俺達はカッジュに甘え過ぎだったんだ」カッジュが寂しげな表情をした。
「すまん‥俺はそんなつもりで」
カッジュの目が少し潤み始めていたの見て、俺は少し焦った。カッジュは俺の手からマグカップを取って、コーヒーを淹れながら言った。
「いいえ‥中佐謝らないで下さい。ちょっと‥感激しちゃった。そんな風に思って頂いてるんだって。これ嬉し涙です‥またご許可頂けるなら、部にコーヒーを入れに来ます。カッジュ・スペシャルブレンドをね」潤んだ瞳で、カッジュは笑った。

俺は職務中なのに、そんなカッジュを見てまた理性がコントロールできなかった。気がついたら、カッジュの頭を腕で軽く抱いていた。
「‥‥いつでも来てくれ。待ってる‥俺もみんなも」
「‥‥はい。中佐」震えた声でカッジュはつぶやいた。

ランチ休憩が終わり、私は紙袋を持って部室に戻った。ランチの時にダチのアン達からプレゼントをもらったのだ。アン達がバースディ・プレゼントをくれたのだ。少し早いバースディ・プレゼントだが、私はバースディの日は‥クゥと二人でお祝いすることになっていた。アン達は気を利かせてくれて、先にバースディ・プレゼントをくれた。 

部に戻ると、誰もいなかった。おや‥電話番の先輩はどこに行ったのかな?誰か待機していないといけないのに、お腹でも痛くなってトイレに駆け込んだか?ロッカーに紙袋を置きに行こうかと思ったが、私は電話番の先輩が戻って来るまで居る事にした。内線電話が鳴った。私は受話器を取り‥
「はい!NATOCファイン支部・諜報1班 立野です。」
電話の相手は黙っているようだ。これは逆探知するべきか‥私はデスクの下のボタンに手を伸ばした時だった。

「‥‥一美か?」
私は反射的に受話器を置いた。今‥私が一番聞きたくない声だったから。その電話の主は、立野裕次郎こと‥私の父だった。