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「佳恵、東京に支店を出すことになったので、しばらくそちらへ移るつもりだ。住むところはマンションを借りてくれるというから心配はないんだけど、掃除とか洗濯とかが困るので、一緒に来てくれるか、週に一度通ってくれないか？」

「ええ？東京ですか・・・」

「どうした？面倒なのか？」

「そんなことはありませんけど、交通費が大変じゃないんですか？新幹線の往復を月四回もしたら10万は超えますよ」

「経費だから気にするな。回数券買って渡すから、頼むよ。洋子も学校が休みになったら一緒に来るといい」

「洋子は行きたがらないと思いますよ」

「なんでだ？」

「だって、手伝わされるでしょう？お掃除とか洗濯とか」

「女の子だぞ。それぐらいは出来ていいと思うけどなあ」

「今時はそんなこと言うと嫌われますよ」

「仕方がない奴だ。お前がちゃんと教育しないと嫁に行くときに困るから、頼むぞ」

「今時の夫はあなたのように家のことは何でも妻が、ということは無いので、ご心配されなくてもいいですのよ」

「それ、イヤミか？」

「私はあなたには感謝していますから、何とも思いませんが、洋子は今時の女子なので私とは考え方が違うと言ったまでです」

「まあ、いいや。じゃあ来週に引っ越すから頼んだぞ」

夫はそう言うと東京～名古屋間の新幹線回数券を渡した。
突然のことでまだ少し迷ってはいたが、向こうへ行くのではなく通うことを選択した。

「ねえ、洋子。パパね、来週から東京へ引っ越すの。なんでも会社を新しく作るらしい。それでね、一緒に来いと言われたんだけど嫌な顔したら、じゃあ週に一度洗濯と掃除に通ってくれと言われたのよ」

「東京か・・・一人で行けばいいのにね。掃除や洗濯ぐらい、今時の男性は自分でするよ。パパはママに甘えていると思う」

「そうはいっても、パパが居ないと私たち困るから、多少は言うことも聞かないといけないのよ」

「ねえ？パパはママが好きで結婚したんでしょう？お金のことで気を使う必要なんてないと思うけど」

「昔はね。パパは私や洋子のために仕事をしていると、良く言ってたわ。それに対して感謝していると言ったのよ。洋子が結婚して出て行ったら、パパと二人きりになるからその時は解らないけどね」

「ええ？今のどういう意味で言ったの？」