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大当たり

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ウッソぉ‥信じられない。私が当てちゃったの?
商店街の福引の会場で、私は立ち尽くしてしまった。
当たったモノがあまりにも大物で。

私は、佐倉かなみ 40歳の女子だ。商店街の役員さんが私に言った。
「当選したテレビ!ご自宅にお届けします。お名前とご住所を書いてください」
私にペンと用紙を渡した。

これだけではないのだ。
ここ2週間私は懸賞や抽選に当たりまくっているのだ。
2週間前に、短大時代のマブダチ・一美が私にくれたものがあった。
「あげる!もう効き目ないみたいだから」逢うなりに私にあるモノを手渡した。
そのあるモノとは‥黄色い寅の柄が入ったポーチだった。
このポーチどっかで見たことがあるな?どこだっけ?

一美と別れてから、家でパソコンでポーチの出所を調べた私だった。
「あぁ‥やっぱりね。これ「幸運の寅ちゃん」だわ」
もらったポーチは、雑誌でよく取り上げられていてる「幸運グッズ」だった。
私は元々こういうモノには興味がない。でもこの頃はちょっと違った‥

40歳を目の前にしてから、不運続きの私だった。交際2年目・同じ年の彼氏が
いたのだが、24歳の女に略奪されてしまった。それだけじゃない‥
仕事面では長年私のアシスタントをしていた33歳の女が異例抜擢で、私の上の課長に昇進したのだ。33歳の女は‥旦那持ち・一児でいわゆる「勝ち組」だ。私はその晩‥悔しくて悔しくて眠れなかった。まだあるのだ。全部ブチまけたいところだが、思い出すと腹が立つからもう言いません。

ポーチを手に取って私は1時間考えた。最近‥不幸続きの私だから。
「ま‥タダでもらったもんだし。取りあえず持ってようか」
ポーチをショルダーバックに入れた私だった。

その翌日から効果が現れてきた。いつも行くドラッグストアーでサプリメントを買った時の事だった。薬剤師さんが私の持っていたサプリメントを見て‥
「今キャンペーンで抽選やってますよ。どうぞ!」
差し出された箱に手を突っ込んだ私だ。どうせ当たんない‥くじ運最低な私だし。そう思って上にあった1枚のスクラッチカードを取り、スクラッチカードを手渡した。

「おめでとうございます!1等賞ですよ!」声を張り上げた‥
私の手にブランドの紙袋が手渡された。それは私が欲しかったXXXXの財布だった。
「ウソ‥夢じゃないの?これ」まだ信じられない私だった。

家に帰ってから、ブランドの財布を手に取って眺めていた私はつぶやいた。
「欲しかったのよね‥これ。あのポーチのおかげかな?でもまだ1日しか経ってないわよ。タマタマよ‥私は昔からくじ運悪いじゃない」
自分に言い聞かせた私だった。

それが違った。
毎日のように何か当たるようになった。財布の次は某ブランドのトートバックが当たり、宝くじ売り場でスクラッチカードを1枚だけ買って削ってみると1万円が当たったのだ。これは本当かもしれない‥あのポーチのおかげだ。

そんな日が2ヶ月も続いただろうか。
ポーチのおかげで、私の部屋には当たったモノで溢れていた。
「もうモノや現金は要らないわ。当たりすぎると返って怖くなっちゃう」
そう思い始めた私だった。またポーチを手に取って‥
「もうご利益は一杯頂きました。他にも願い事はあるけれど‥」
これは願い事のジャンルが違うと思ったから、言うのをやめてしまった私だった。

数日後‥ポーチを一美に返したのだ。一美は私の話にビックリしていた。
「いいの?まだ願い事があれば使っていいのに」
「うん。私の願い事はジャンルが違うから‥」

それから1ヶ月が経った。
私は待ち合わせのカフェのドアを開けた。
カフェのテラスに座っていた男性が私に向かって‥
「かなみ!こっちだよ」笑顔で私に手を振った。
「うん。隆一さん」また私も笑顔で手を振った。

ポーチを一美に返して‥もう私には幸運は来ないだろうと思っていた。
また日々平凡な毎日が続くと思っていた。ところが幸運はまだ続いていたのだ。
仕事先でちょっとしたアクシデントがあった。そこのスタッフが腹痛で苦しんでいた。私は常備携帯の薬を彼にあげたことがきっかけで仲良くなった。また趣味も同じで価値観も同じだった彼から結婚前提の交際を申し込まれた。先月にプロポーズをされた。

ポーチのおかげで、グッズや現金を当てたけど、本当の大当たりは彼だったかもしれない。                          
                       完
 
 


作品名:大当たり 作家名:楓 美風