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クリスマスプレゼント

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私は 橋本奈津 27歳の看護師だ。
毎日毎日‥激務で家と病院の往復だ。時は12月で街はクリスマスカラーなのに。
何だか‥みんな楽しそうなのに。私だけ何でこんなブルーが入るのだろう。

原因はわかってる‥
同期の美菜子が「結婚退職」が決まり、また後輩の佐紀が「授かり婚」で二人同時に来月で退職が決まったからだ。彼氏とは交際期間10年になる。10年の間にすっかり空気のような存在になってしまった。もうここ数年は彼氏にときめいたコトはない。もうダメかもしれない‥最近思っている私である。

今日も残業になり晩ご飯も作る気力もなく、家の近くのコンビニで食料を調達した。コンビニには時間帯が悪いと品揃えが悪い。今日はモロにソレに当たってしまったようだ。ビニール袋の中には、クロワッサンとオニギリ1個だった。パスタもお弁当も売り切れてなかったのだ。
「あるだけマシだわ。帰って食べよう」歩き出した私だ。

家に帰ってからコタツに入り夕食を取った私だ。テレビは23時のニュースを放映していた。
「あぁ‥悲しい。クリスマスイブに残業で食事はコンビニだなんて」
ため息ばかり出る私だ。彼氏の健太は今日はいない。

健太の仕事はクリスマスシーズンは超忙しいのだ。健太は洋食レストランのシェフで2年前にやっと厨房で料理を任されるようになった。健太はそれからは仕事一筋男になってしまった。逢えなくても‥お互いに仕事が忙しいので諦めがついたようだ。

私はいつの間にか居眠りをしていたようだ。何か物音がしたので目が覚めた。目をこすりながら、テーブルから頭を起こした私が見たものは。夢を見ているのだろうか?

ウサギと犬とサンタクロースがトランプをしているのだ。サンタクロースの横にはトナカイもいる。また1人と動物3匹で「ババ抜き」をしていた。またババ抜きに白熱しているから、私が目覚めたことにまだ気づいていない。また私は驚きで口も利けなかった。

サンタクロースがカードを引きながら言った。
「うーん!あと1枚揃えばワシの勝ちなのに」犬とウサギは笑いながら言った。
「サンタさん‥さっきからそればっかり」
「1枚じゃないよ。ババ持ってるんだろう。ルール知ってる?」
トナカイはサンタさんのカードを横から覗いてため息をついた。

私はこのトランプゲームが面白く、まだ寝たフリをしてゲームの行方を見守っていた。
でも犬に見つかったのだ。
「起きてるんだろう?奈津さん」その声にウサギが笑いながら言った。
「奈津さん‥一緒にやろうよ。このサンタさんにババ抜きのルール教えてやって」

エ‥エェ‥何で私の名前を知っているの?トナカイが前足で私の膝を軽く叩いた。
「その2匹はね‥あなたのお部屋の住人だよ。ボクとサンタさんは部外者だけど」
私はカップボードの上を見た。いつもウサギと犬を飾ってあったのに‥その2匹がイナイのだ。またその2匹は3倍ぐらいの大きさになって、私の目の前に座っていた。
「‥アナタ達なの?」
ウサギと犬はうなづいた。またサンタさんもトナカイも同じようにうなづいた。

それから、私は仲間に加わってババ抜きをしていた。ババ抜きをしながら愚痴っていた。
「ひがんでるワケじゃないのよ。言ってほしかったの」
サンタさんは私のカードを抜きながら言った。

「自分だけが仲間外れにされた気分だったのだろう。奈津さん」
ウサギも犬もカードを抜きながら言った。
「またさ‥奈津さん何にも言わないんだろう。自分から聞きもしないし」
「いつか話してくれるんじゃないのかと思ってるから‥聞かないんだよね」

この2匹は‥私の性格をよく知っているようだ。
「どーしてそんなことがわかるのか?って顔してるよ」トナカイが言った。
ウサギが私の目の前にカードを広げた‥そしてウサギは言った。
「奈津さんってさ、この部屋でよくボヤいてるよ。小さい声で」

そう‥それが私の癖なんだ。病院では言いたいことも言えず、また聞きたいことも聞けず、後で「あぁすればよかった」とか「言えばよかった」と家に帰ってきてから、部屋の中でブツブツ言うのだ。健太の事もそうだ‥
「うん。その癖がね‥」話し出した私だった。

ババ抜きを何回しただろうか?
私は仕事の疲労もあって眠くなってきた。カードを持つ手も力が抜けてきたようだ。
半分寝た頭の中に‥サンタさん達の声が聞こえた。
「自分から聞かないといけないよ。言わないと相手に伝わらないモノなんだよ。今からでも遅くないよ!今日を機に変わりなさい。それで物事も変わるんだから」
作品名:クリスマスプレゼント 作家名:楓 美風