散歩道
散歩道
いつも二人で歩いていた散歩道を私は歩いている。
あなたとは‥よく歩いたよね。いつの季節も‥
春の季節はさくらの遊歩道を歩いたっけ。あなたが途中で「さくら餅」を買って歩きながら食べたっけ。夏の散歩は「朝早く起きて綺麗な空気を吸いに行こう」と
半分寝ている私の腕を引っ張ったよね。眠かったけど‥あなたと散歩が行きたくて頑張って起きたわ。
秋の散歩は‥夕暮れ時が多かった。あなたは秋の夕暮れが大好きだった。真っ赤に染まる空が好きで、いつも時計を気にして「まだかな?」と言ってソワソワしてたよね。私は横でちょっと呆れたけど‥夕暮れの時間を一緒に待っていたね。
冬の散歩は‥二人寄り添い歩いたよね。寒いのに散歩なんかして‥風邪引くかもしれないのに。私はまたあなたに付いて散歩に出かけたわ。
二人でずっと四季の散歩を楽しめると思ってた。ずっと手を繋いで、あなたの横顔を見ながら歩けると思っていた。でも‥もう一緒に歩けない。
あなたは「虹の橋」を渡ってしまったから。私が病院に駆けつけた時は、まだあなたの体は温かった。死んだなんて信じられない‥彼の死を認めるにも認められない私がいた。彼が逝ってから、私は生きているのか‥死んでいるのか自分でもよくわからなかった。心の中は彼の事で頭が一杯で、誰の言葉も耳を貸さなかった。イヤ‥聴こえなかったのだ。
彼が逝ってから1ヶ月が過ぎた頃だった。私は彼が逝ってから、殆ど外に出なかったのだが。どうしてだろうか?出かける用意をしたのだ‥
それから3ヶ月が経った。季節は秋になっていた‥
私はゆっくり‥歩いた。時々‥手でおなかを触りながら‥
「夕暮れがとてもキレイよ。パパとよく散歩して夕暮れも見たの。チビちゃん。来年の春の桜は‥ママと一緒に見てね。パパの分まで」おなかをなでた私だった。
来年の4月には‥二人で散歩ができるかもしれない。
彼と良く見た桜並木の道を‥今度は彼の子供と歩くのだ。 完