ダブルな顔
第1章 被害妄想なワタシ
私は榎本さくら‥元々大人しい性格の私だ。学生時代は目立つ事はイヤでいつも目立たないようにしていた。近眼でもないのに、黒ぶちの眼鏡をかけて髪も校則通りのお下げにしていた。いつも下を向いてた記憶がある。そんな私も短大を卒業し一般企業に就職し経理部に配属された。その経理部で働き出してから‥私はイジメにあった。
私よりも20歳上の古株のパート社員にとことんイジめられたのだ。当時は‥
「私が頼りないから、怒られているんだ。もっとしっかりしなきゃ!」
と自分で自分にカツを入れていたのだが。限界が来て「出社拒否症」になってしまい1年で会社を辞めた。それから2年‥人と接することが怖くなって家に引き籠った。会社でイジメにあったトラウマか‥事あるごとに私を被害妄想に陥れた。
母が何気に言った一言で泣きだし‥泣きながら叫ぶ。母は私を想って「気分転換」を勧めたのだが。人と接することが怖い私にとってはそれはすごくツライ事だった。
ある日、どうしても出かけなければ行けない用事ができて外出した時の事だった。駅の切符売り場で路線図を見ていた。目的地まで220円だった。あいにく財布の中を見たら1万円札しかなかった。またその機械は1万円札は使えなかった。また私もその事に気づくのに時間がかかった。後ろに並んでいた40歳ぐらいの女性が足踏みをした。靴のかかとで‥
「ね!まだ?私急いでるんだけど。」の声が聴こえた。
「す‥すみません」
私はその声に慌ててしまい。財布が手から‥落ちて財布の中身が落ちた。
携帯を片手に散乱したカード類を拾った時にまたその女性が言ったのだ。
「ホント‥迷惑よね。携帯ばっかイジってるからよ!だから反応が遅いのよ」
私は泣くのを必死に堪えたが涙が止まらなかった。切符も買えずにまた用事も済んでいないのに‥私の足は家に向かって駆け出していた。女性の言葉が胸に突き刺さった私は‥それから家から1歩も出れなくなっていた。