小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

至極当然

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 


「わ…私、け、消されちゃうんですか?」

「…有り体に言ってしまえば、そういう事です」

 当然の様に とんでもない事を言う職員に、私は声を荒げた。

「それって、殺人じゃないんですか?」

「お客様と全く同じ肉体や記憶を持つ個体が 既に転送先に存在しますから、そういう事ではありません」

「─ でも、転送元の私は…消されてしまうんですよね?」

「転送とは、そう言うものですから」

「な、何故…オリジナルの私が、き、消えないと…いけないんですか?」

「失礼ながら…既にお客様は、オリジナルではございません」

「ど…どう言う意味ですか?」

「お客様が転送装置を利用して頂いたのは、今回が初めてでは ありませんよね?」

「…」

「つまり…1回目の転送で、本来的な意味での お客様のオリジナルの存在は、既に消滅している事になります」

 困惑して、私は沈黙する。

 スピーカーからは、慇懃な声が流れ続けた。

「転送前でも転送後でも、お客様の肉体や記憶 癖に至るまで、まったく失われては いません。

 それが証拠に、今まで転送装置をご利用頂いた後、お客様には 何ら不都合は無かった筈でございます。

 たまたま今回、転送前と転送後の存在を意識したため、混乱しているだけですよ。お客様──」

 とにかく何か言い返さないといけないと思い、口を開こうとする私。

 それより先に、事務的な声が告げた。

「お客様。只今 準備が整いましたので、転送処理を再開させて頂きます。目を お閉じ下さい。」

 有無を言わせず、転送装置が起動を始める。

 私の存在を、消すために。。。
作品名:至極当然 作家名:紀之介