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佐野みむろ
佐野みむろ
novelistID. 42051
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20のショートケーキ

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死活問題



 ある男が、家でひとり、酒を飲んでいる。職業は、医師。少しつかれたようすで、ソファにすわっている。
 そこへ、黒い服を着た男があらわれる。入り口から、はいってきたのではない。壁をとおりぬけてきた。
「きょうも手術は成功でしたね。あんなに難しい手術だったのに」
 医師は、男のほうをちらりと見た。おどろかない。もう慣れてしまったのだ。こいつがあらわれるのは、これで何度目だろう。
 男が、にやにやと笑いながら言った。
「今夜も、深酒ですか。医者の不養生とは、このことですね」
「うるさいな、死神め。おまえの顔なんか見たくない。出ていけ」
「そうはいきません。きょうこそは、あなたの気が変わっているかもしれませんからね。お金なら、ほんとうにいくらでもさしあげます。ですから、あなたには引退していただきたい……」
「わたしは、絶対に医者をやめない。そもそも、引退するほど老いぼれていないんだ。わたしの性格なら、もうわかっているだろう。いったん決めたことは、最後までつらぬく」
「ええ。あなたのことならよく知っていますよ。いやというほど」
 死神が、笑みをひっこめた。
「何度でも言います。人の死は運命であり、避けられないものなのです。しかし、あなたが手術すると、その運命が変わってしまう。これは死活問題です。われわれ死神の立場も考えていただきたい」
 医者は、グラスの酒を飲みほした。
「それはこっちのセリフだ。わたしは、患者を救うのが仕事なんだ。手術を成功させて、文句を言われるすじあいはない。……とはいえ。死の運命を変えてしまうほど、自分がすぐれた医者とは思えない。たぶん、祖父の代から医者をやっているからだろうな。医学の神が、わたしの味方になってくれているんだ」