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文字へ託する

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 誰かと会話するより文字に託して心に溜まった気持ちを書くのが自分にとって癒しになることを最近とみに感じている。

 人はそれぞれ自分の立場で確固とした考えを持っていて、たとえその場で他人に合わせて話をしているようでも、心中では自分の考えはゆるがないのである。
だから100%満足する会話もないし他人もいない。

 文字という人間に与えられた文化を使って癒しが得られるなら、自分にとってこんなに幸せなことはないだろう。

 ー映像と文字ー

 私の現在の暮らしはこの与えられた恵みによって、日々の精神状態のバランスが保たれている。
 ひとと話した後は疲れる。
 時によっては腹が立つ。

 嬉しいという感情が湧くのはごく稀なこと。
 そしてそれは長くは続かない。


 知人に「お喋り」が趣味なの、という人がいる。そのことを聞くたびになんとさびしい人だろうといつも思う。
お喋りというものは他人との対話なので、挙句の果てには自分の口から出た「うっかり」が飛び火して飛んだ火の粉を被るのを何度も目の当たりにしてきた。

 昔から「口は災いの元」というではないか。
 それならいっそ「沈思黙考」へでも転換すれば良いものを、そういう反省すらない。

 世の大勢の人達が手近なブログを書くのは、自分のことを知ってもらいたいということもあろうが、結局は書くことが自分への癒しになっているのだ。

 私は自分の文字が自分へ語り掛けているような気がしている。
 もう一人の自分が、うんうん、そうだね、と慰めたり励ましたりしてくれる。

そういうのを孤独とはいわない。
自己満足でもない。
もう一人の自分なのだから心変わりもしない。
素晴らしいことだと思うのである。
作品名:文字へ託する 作家名:笹峰霧子