ブリキのソレルのアンブレラ
【著】松田健太郎
●登場人物
◯ソレル、探偵
○チエロ、バンセン
●ブリキの兵隊は転がる自分の頭を拾い上げる。
ソレル「ここにもいない、か」
探偵「おさがしですか。もしもし、おさがしですか」
ソレル「ぽぽぽっぽーーーうっ」
探偵「おさがしですか、兵隊さん」
ソレル「あなたは?」
探偵「わたしは、名のない探偵ですよ」
ソレル「ぽぽぽっぽーーーうっ」
探偵「アンブレラの刺さったブリキのチェロ引きさんが」
ソレル「わたしをさがして、ガッチャガチャ」
探偵「そう、ガッチャガチャ」
ソレル「ぽぽぽっぽーーーうっ」
探偵「もしもし、頭を落としましたよ」
ソレル「いやはやどうも、めがまわる」
探偵「彼の居場所は、知りますか」
ソレル「しりません、おしえろください」
探偵「ならばこの先のレンガの店を尋ねるといい」
ソレル「ありがとう、なのないたんていさん」
探偵「もしもし、もしもし兵隊さん」
ソレル「なんだい、たんていさん」
探偵「私の名前を知りますか」
ソレル「ぽぽぽっぽーーーうっ。しりません」
探偵「探しては貰えませんか」
ソレル「わかりました」
探偵「ぽぽぽっぽーーーうっ」
●ブリキの兵隊は歩きだす。落とした頭を探偵に持たせて。
チエロ「アンブレラがささっちまった、おれはもうかぜにのってそらをたびするのさ」
バンセン「アンブレラがひらかなきゃ、そらはとばねぇ」
チエロ「アンブレラ」
バンセン「アーンアンアンブレラ」
チエロ「おれのチェロでベンベンベン」
バンセン「きみのアンブレラでチェロならせ」
チエロ「なぁ、バンセン。アンブレラのボーンがいかれちまったぜ」
バンセン「おれのバンセンつかうか?」
チエロ「そしたら、きみはどこにいく」
バンセン「アンブレラでかぜにのって、そらをいくさ」
チエロ「アンブレラがひらかなきゃ、そらはとばねぇ」
バンセン「アーンアンアンブレラ」
チエロ「おれのチェロでベンベンベン」
ソレル「チェロがないなら、はらかきならせ」
バンセン「ガッチャガチャガチャガッチャガチャ」
チエロ「ソレル」
ソレル「さがしたぞ、チエロ」
チエロ「だれをだい、アンブレラをかい」
ソレル「きょうは、あめがひどいからな」
バンセン「そのアンブレラのボーンはいかれちまったぜ」
ソレル「ぽぽぽっぽーーーうっ」
バンセン「よう、ソレル」
ソレル「バンセンか」
バンセン「そちらのアンブレラはだれだい?」
ソレル「あたらしい、アンブレラさ、ぼくあたまのアンブレラさ」
探偵「名もないアンブレラですよ。私の名前はアンブレラですよ」
ソレル「アーンアンアンブレラ」
チエロ「ソレルのチェロでベンベンベン」
ソレル「チェロがないなら、はらかきならせ」
バンセン「ガッチャガチャガチャガッチャガチャ」
アンブレラ「雨が止みましたね。ブリキの兵隊さん」
ソレル「もしもし、おさがしですか」
チエロ「アンブレラがいかれちまってな」
アンブレラ「それなら私を刺しましょう」
チエロ「チェロのげんがいかれちまってな」
バンセン「おれのバンセンでそらをたびしな」
アンブレラ「アーンアンアンブレラ」
ソレル「おそらをとんで、たびするよ」
アンブレラ「ひとつになって、たびするよ」
ソレル「アーンアンアンブレラ」
アンブレラ「やっと揃った僕の名前」
作品名:ブリキのソレルのアンブレラ 作家名:月とコンビニ