見参、真童江茂助。
見参、真童江茂助。
【著】松田健太郎
○登場人物
・枕将軍、真童江茂助(しんどう・えもすけ)
・尾道主浩(おみち・かずひろ)
・佐々倉大臣(ささくら・ひろおみ)
・刷吊水木(すりづり・みずき)
・三角刈菜(みかど・かるな)
尾道 では現在の私たちの状況を整理しましょう。
佐々倉 聞こう。
尾道 幸いにも、三角さんは隣の部屋を借りている。
佐々倉 幸いにもだなんて幹事さ〜ん。
尾道 そう、この作戦はボクが合宿の幹事になった時から動いていた。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 宿を調べ、口コミを読み、ある裏サイトを読み。
佐々倉 出ました裏サイトっ。興味あるんだが。
尾道 ヒミツさ。と言いたいとこだが、サイト名だけは教えてしんぜよう。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 「変質系ウォールGUYS」
佐々倉 変質だな。
尾道 GUYSなとこがまたね。BOYSじゃないっていうね。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 さ、状況整理に戻ろう。これは重要な過程なんだ。
佐々倉 重要なだけに需要もある、ってかっ。重要、需要
尾道 部屋の配置を把握しよう。この部屋の家具の配置、他の部屋でも同じなようだ。
水木 悪いやっちゃ〜。
佐々倉 へぇ〜。
尾道 そして、三角さんの両隣の部屋は私たちで埋めている。この部屋は私、尾道と佐々倉。反対側の部屋は水木さん。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 三角さんは最初はこの部屋割りに不思議そうな顔をしていたが、そこは私の巧みな話術で退けた。
佐々倉 流石だぜ、尾道ぃ! ちなみに俺が悪者になってやったぜ。おかげで三角さんからドギツイ視線を浴びる結果となったがゾクゾクしたね!
尾道 佐々倉、君を選んで正解だったな。いいか、己等。この作戦は一人でも欠けたら失敗すると思え。三角さんと仲良くなり、あわよくば付き合いたい! この中の誰もがそう思っていると違うか?
水木 そうさ、俺らは同志であり敵でもある。だけど、誰もスタートラインにすら立っていないんだ。
佐々倉 スタートラインに立つくらいは協力しないとな。
尾道 そこで必要なのは敵情視察。三角さんをよく知る必要が出てくる。趣味や話し方、好きな食べ物から好みのタイプ。生活スタイル全てを学ばせていただこうではないか。そのための合宿だ。
佐々倉 その秘密の宿がここ。どういった秘密があるんだい? 尾道殿、そろそろ教えてくれよう。
尾道 ふっふふ。この掛軸に注目せい。どぅっどぅっどぅどぅ。刮目せよ!
●尾道、掛け軸をめくる。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 さすがは水木殿、見つけるのが早い。この穴を使って観察するのだよ。
佐々倉 な、なんだと……そんなことが許されるのか……っ。
尾道 大きな偉業を成し遂げるものは皆、リスクを背負っているのだよ諸君。
●SE「チャカチャンチャンチャンチャンチャンッチャチャンッ」
佐々倉 な、なんだ!
水木 何の音だ!
江茂助 産声が、天国地獄と、駆け巡り、行き着く先は旅の宿。世は平穏なりとも夜は騒乱。仏といえども悪鬼と化す。煌く星間、狼煙は上がった月一ぉつ。我が陣営は無敵なり!
尾道 何奴だっ!
江茂助 何奴かとぉ問われれば、名乗る名などありゃせんが、仁に欠くとぉ重んじて。我が名は真童江茂助! 騒乱の枕将軍「真童江茂助」たぁ、拙者のこったい!
尾道 おれは響。延暦寺響だ。
佐々倉 いや尾道和博だろ。
尾道 だってあの登場かっこよくて。私の名はダサくて。
水木 で、枕将軍? 何しに来たわけ。
江茂助 よぉくぞ、聞けたものよぉ! 悪事を企てる、三人の悪代官。この枕が目に入らぬかぁあん?
尾道 なに? 我々の壮大な作戦を悪事と申したか。
佐々倉 それを邪魔する貴様は何様じゃ。
水木 悪いやっちゃ〜。尾道殿、佐々倉殿、懲らしめてやりなさい!
江茂助 まてぇぇいい。
尾道 あ、ちょ、大声はやめていただけますか。色々と聞こえてはまずいことがある
ので。他にもお客さんはいますし……。
江茂助 神聖なる戦闘を野蛮な行為で汚させはしない。
尾道 戦闘?
江茂助 この真童江茂助、枕投げを申し入れる。さぁて……開戦じゃあぁぁぁ!
尾道 いきなり始めるのは卑怯だっ
佐々倉 スポーツマンシップに則ってくれ
江茂助 決め事は簡単、最後まで立っていたものが勝者なり。
●江茂助たちは枕投げを始める。
江茂助 三対一であるからして、お主らが有利な状況である。拙者を楽しませてくれよう。
水木 ぐほぉぉうっ
佐々倉 水木、大丈夫か。
水木 やつの枕は石でも入ってるのか……
尾道 枕将軍という名は伊達ではないな。
江茂助 さぁさぁさぁさぁ、どうしたかかってこんかいいい
尾道 佐々倉、水木、奴は相当な手練だ。やつの持っている枕を調べてみたが、中身は他と変わらないこの宿の物だった。うごぅおっ! しかしこの衝撃は何なんだ。枕を扱う技術に何か秘密があるはずだ。ぐひゃっ! それを調べよう、そうしなければ私たちに勝ち目はない。み、水木っ大丈夫か! 早く起き上がれ! 佐々倉と水木はやつの攻撃をひきつけてくれ、私はヤツを観察する。ごふぉおっ! はぁっはぁ、穴だけは死守するぞ。
佐々倉 尾道、おまえそこまでして……見直したぜ。
水木 単なる変態ではなかったんだな。
江茂助 話してばかりでヌルいヌルい! 拙者イカサマなどせぬ所存。兵法は歓迎ぞ。
尾道 隙きがない……。
江茂助 これで最後じゃあ!
●三角さんドアを開けて入ってくる
三角 ちょっとさっきからうるさい!! なにしてるの!? 枕投げ? 枕投げならもっと静かにやりなさいよ! 後誰か知らないけど、そこの枕いっぱい持ってる人あなたが一番うるさいわ。場所を考えなさいよ。大声出してばかりいて、静かに電話もできないじゃない。なんでこんなことになってるか知らないけど、やるならもっと静かにやりなさい?
江茂助 失礼致した。お嬢さん、実は小奴らは
尾道 三角さぁん! 一緒にやりません?
佐々倉 お、おいどういうことだよ
尾道 一緒に遊べば仲良くなるチャンスが有るだろう。
水木 悪いやっちゃ〜。
佐々倉 ここは戦場だぞっ?
三角 う〜ん、遠慮しとくわ。面白くなさそうだし。
江茂助 うむ。ここは危ないからよしときなさい。
三角 優しいのね。
江茂助 西洋の言葉でフェミニストというものでござんすよ。
三角 じゃ、静かにね。
●三角部屋を出て行く。
尾道 貴様……何仲良く喋ってんだよ……
佐々倉 許せねぇ……おれたちの努力を……
水木 殺意が湧いてくぜ……
江茂助 その目線を変えぬ限り、主らに勝ち目は無かろうよ。
尾道 そんなことはやってみなきゃわからない。三人がかりであればお前なんて。
江茂助 ふっ、この戦のことではないわい。先ほどのお嬢さんのことさ。
【著】松田健太郎
○登場人物
・枕将軍、真童江茂助(しんどう・えもすけ)
・尾道主浩(おみち・かずひろ)
・佐々倉大臣(ささくら・ひろおみ)
・刷吊水木(すりづり・みずき)
・三角刈菜(みかど・かるな)
尾道 では現在の私たちの状況を整理しましょう。
佐々倉 聞こう。
尾道 幸いにも、三角さんは隣の部屋を借りている。
佐々倉 幸いにもだなんて幹事さ〜ん。
尾道 そう、この作戦はボクが合宿の幹事になった時から動いていた。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 宿を調べ、口コミを読み、ある裏サイトを読み。
佐々倉 出ました裏サイトっ。興味あるんだが。
尾道 ヒミツさ。と言いたいとこだが、サイト名だけは教えてしんぜよう。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 「変質系ウォールGUYS」
佐々倉 変質だな。
尾道 GUYSなとこがまたね。BOYSじゃないっていうね。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 さ、状況整理に戻ろう。これは重要な過程なんだ。
佐々倉 重要なだけに需要もある、ってかっ。重要、需要
尾道 部屋の配置を把握しよう。この部屋の家具の配置、他の部屋でも同じなようだ。
水木 悪いやっちゃ〜。
佐々倉 へぇ〜。
尾道 そして、三角さんの両隣の部屋は私たちで埋めている。この部屋は私、尾道と佐々倉。反対側の部屋は水木さん。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 三角さんは最初はこの部屋割りに不思議そうな顔をしていたが、そこは私の巧みな話術で退けた。
佐々倉 流石だぜ、尾道ぃ! ちなみに俺が悪者になってやったぜ。おかげで三角さんからドギツイ視線を浴びる結果となったがゾクゾクしたね!
尾道 佐々倉、君を選んで正解だったな。いいか、己等。この作戦は一人でも欠けたら失敗すると思え。三角さんと仲良くなり、あわよくば付き合いたい! この中の誰もがそう思っていると違うか?
水木 そうさ、俺らは同志であり敵でもある。だけど、誰もスタートラインにすら立っていないんだ。
佐々倉 スタートラインに立つくらいは協力しないとな。
尾道 そこで必要なのは敵情視察。三角さんをよく知る必要が出てくる。趣味や話し方、好きな食べ物から好みのタイプ。生活スタイル全てを学ばせていただこうではないか。そのための合宿だ。
佐々倉 その秘密の宿がここ。どういった秘密があるんだい? 尾道殿、そろそろ教えてくれよう。
尾道 ふっふふ。この掛軸に注目せい。どぅっどぅっどぅどぅ。刮目せよ!
●尾道、掛け軸をめくる。
水木 悪いやっちゃ〜。
尾道 さすがは水木殿、見つけるのが早い。この穴を使って観察するのだよ。
佐々倉 な、なんだと……そんなことが許されるのか……っ。
尾道 大きな偉業を成し遂げるものは皆、リスクを背負っているのだよ諸君。
●SE「チャカチャンチャンチャンチャンチャンッチャチャンッ」
佐々倉 な、なんだ!
水木 何の音だ!
江茂助 産声が、天国地獄と、駆け巡り、行き着く先は旅の宿。世は平穏なりとも夜は騒乱。仏といえども悪鬼と化す。煌く星間、狼煙は上がった月一ぉつ。我が陣営は無敵なり!
尾道 何奴だっ!
江茂助 何奴かとぉ問われれば、名乗る名などありゃせんが、仁に欠くとぉ重んじて。我が名は真童江茂助! 騒乱の枕将軍「真童江茂助」たぁ、拙者のこったい!
尾道 おれは響。延暦寺響だ。
佐々倉 いや尾道和博だろ。
尾道 だってあの登場かっこよくて。私の名はダサくて。
水木 で、枕将軍? 何しに来たわけ。
江茂助 よぉくぞ、聞けたものよぉ! 悪事を企てる、三人の悪代官。この枕が目に入らぬかぁあん?
尾道 なに? 我々の壮大な作戦を悪事と申したか。
佐々倉 それを邪魔する貴様は何様じゃ。
水木 悪いやっちゃ〜。尾道殿、佐々倉殿、懲らしめてやりなさい!
江茂助 まてぇぇいい。
尾道 あ、ちょ、大声はやめていただけますか。色々と聞こえてはまずいことがある
ので。他にもお客さんはいますし……。
江茂助 神聖なる戦闘を野蛮な行為で汚させはしない。
尾道 戦闘?
江茂助 この真童江茂助、枕投げを申し入れる。さぁて……開戦じゃあぁぁぁ!
尾道 いきなり始めるのは卑怯だっ
佐々倉 スポーツマンシップに則ってくれ
江茂助 決め事は簡単、最後まで立っていたものが勝者なり。
●江茂助たちは枕投げを始める。
江茂助 三対一であるからして、お主らが有利な状況である。拙者を楽しませてくれよう。
水木 ぐほぉぉうっ
佐々倉 水木、大丈夫か。
水木 やつの枕は石でも入ってるのか……
尾道 枕将軍という名は伊達ではないな。
江茂助 さぁさぁさぁさぁ、どうしたかかってこんかいいい
尾道 佐々倉、水木、奴は相当な手練だ。やつの持っている枕を調べてみたが、中身は他と変わらないこの宿の物だった。うごぅおっ! しかしこの衝撃は何なんだ。枕を扱う技術に何か秘密があるはずだ。ぐひゃっ! それを調べよう、そうしなければ私たちに勝ち目はない。み、水木っ大丈夫か! 早く起き上がれ! 佐々倉と水木はやつの攻撃をひきつけてくれ、私はヤツを観察する。ごふぉおっ! はぁっはぁ、穴だけは死守するぞ。
佐々倉 尾道、おまえそこまでして……見直したぜ。
水木 単なる変態ではなかったんだな。
江茂助 話してばかりでヌルいヌルい! 拙者イカサマなどせぬ所存。兵法は歓迎ぞ。
尾道 隙きがない……。
江茂助 これで最後じゃあ!
●三角さんドアを開けて入ってくる
三角 ちょっとさっきからうるさい!! なにしてるの!? 枕投げ? 枕投げならもっと静かにやりなさいよ! 後誰か知らないけど、そこの枕いっぱい持ってる人あなたが一番うるさいわ。場所を考えなさいよ。大声出してばかりいて、静かに電話もできないじゃない。なんでこんなことになってるか知らないけど、やるならもっと静かにやりなさい?
江茂助 失礼致した。お嬢さん、実は小奴らは
尾道 三角さぁん! 一緒にやりません?
佐々倉 お、おいどういうことだよ
尾道 一緒に遊べば仲良くなるチャンスが有るだろう。
水木 悪いやっちゃ〜。
佐々倉 ここは戦場だぞっ?
三角 う〜ん、遠慮しとくわ。面白くなさそうだし。
江茂助 うむ。ここは危ないからよしときなさい。
三角 優しいのね。
江茂助 西洋の言葉でフェミニストというものでござんすよ。
三角 じゃ、静かにね。
●三角部屋を出て行く。
尾道 貴様……何仲良く喋ってんだよ……
佐々倉 許せねぇ……おれたちの努力を……
水木 殺意が湧いてくぜ……
江茂助 その目線を変えぬ限り、主らに勝ち目は無かろうよ。
尾道 そんなことはやってみなきゃわからない。三人がかりであればお前なんて。
江茂助 ふっ、この戦のことではないわい。先ほどのお嬢さんのことさ。