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インドのトラ

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ある日の夕方、A駅内にて。
 日本人のN男と、日本とインドを往来して働くインド人Cが歩いていた。
「実家で飼ってるトラネコに『トラ』と名付けるなんて、それは親日家でうれしいなあ」
「ハッハッハ。インドまで、ぜひ遊びに来て下さいヨ」
 と、彼らに突然と声がかかった。
「お~い! N男と、Cさん。偶然だよ~」
 見れば、N男にはよく知っている顔である。
「おお、Y介! あ、おまえこれからヒマ? これからCさんの勤めてる料理店に食べに行くんだけどっていうかごめん! ちょっとトイレに行ってくるから待ってくれる?」
「あ、ああ。俺は時間取れるけど、何だよ慌ただしいな」
「イッテラッシャイ」
 ふたり取り残される。
 少々気まずいのもあって、Y介は、さっき見かけたふたりのやりとりの様子を思い出して話し出す。
「Cさん、N男とは何の話だったんです? やつがうれしそうでしたが」
「あ~、私が実家で飼ってるトラの話デス」
「え~! 本当に? 許可を取ったりしてるんですか」
「いえいえ、要らないデス」
「ほえ~さすがインド」
「放し飼いデスヨ」
「マジですか? 近所的に大丈夫なんですかそれ?」
「よく慣れてますからネ。あいにく、フンが問題になったりしマスガ」
「そうなんだ! その程度なんだ! 気性が激しいトラが」
「それは激しいですヨ。狩りが大好きデス。よくくわえてきますバッタなんかを」
「バッタを?」
「動いている間、執拗に叩きマスネ。ホント激しいデス気性が」
「飼われるってのはそういうことなんだなあ」
「でも、このトラがホント可愛いんデスヨ」
「そんな感じがしますね」
「冷える夜は私の布団の上に乗ってきて、私も寝返りを打つのが打ちにくいクライ」
「苦労が想像できるなあ」
「夜は集会にでも行ってくれたほうがラクデスネ」
「しゅ、集会? それ迫力満点だなあ……ホントすごいなインド……」
 と、そこにN男が戻ってきた。
「お待たせ! さあ行こうか」
「N男、インドってホントあれなんだな。日本人の常識を超えてるな」
「何の話だ?」
 N男が聞いて、ほどなく誤解を解いた。
「そうだったんだ。どうもおかしいと思ったよ。Cさんもお人が悪い」
「ハッハッハ、スミマセン。お詫びに、今日はいつもより力を入れて作りマスヨ」
「お願いしますよ」
「ところで、交通手段はどうシマスカ? よければ、私がレクサスで送りマスヨ。三人ぐらいなら大丈夫デス」
 Y介がちょっと考えて、声を上げた。
「それ自転車か何かだろ!」

【完】
作品名:インドのトラ 作家名:Dewdrop