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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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ある女性の災難

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「ある女性の災難」


あれは確か、3年前のことでした。

 私は当時高3で、部活を終えて帰るところでした。いつも通る道に立つ電信柱のそばに、こげ茶色のコートを着て、マスクをした30歳ぐらいの女性の姿を見ました。あの人、もしかして…。私は即座にそう思いました。

 すると不運にも、その怪しげな女性と視線が合ってしまいました。その人は、黙って私に近寄ってきました。 ― 私は、足がすくんで逃げられませんでした。 ― そして、うわさどおりにこう言ったのです。
「ねえ、私、きれい?」

 私は定番の答えを言おうとしましたが、結果はわかっていました。そこで、別の返事をすることにしたのです。私は身に着けていたクロスのネックレスをはずし、彼女に差し出して言いました。
「このネックレスを身に着けたほうがきれいですよ」
 するとどうでしょう。その女性はみるみる青ざめて震え、マスクをしたまま叫び声を上げ、走り去っていきました。私は予想外のリアクションに驚きましたが、彼女のあとを追いました。お断りしておきますが、決して彼女のリアクションを楽しむためではありません。

 私から(というよりもクロスから?)逃げる途中、ついていないその女性は転んでしまいました。彼女は、通りかかった中年の男性に声をかけられました。
「大丈夫ですか」
 その男性が彼女を起こそうと手を差し出し、女性がその人の手に触れたとき、信じられないことが起こったのです。

― 彼女は、「あちちっ」と言って手を引っ込めたのです!

 その女性は、両膝を地面に着けたまま、泣き叫びました。
「こんな怖い町、もう居られない〜!」

 私は気付きました。彼女に手を差し伸べた男性は、私の通う教会の神父さんだったのです…。


                     - Fin -
作品名:ある女性の災難 作家名:藍城 舞美