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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『ショートショート…タイムトラブリィ3』

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『ショートショート トレード』

どこでそれを?
うむ、まぁ、どことは言えないのだが、察してくれ。
そうですか…分かりました。でも、50年分ですよ、念のため。
重々、承知だ。
貴方様のような方なら、当然の選択かも知れません。そう思えてきました。
有り難う。

御礼を言われるには、まだ早いですが。何しろ相手の意向もあってのことですので。
それなら心配には及ばない。
と、言いますと?
話は付いてる。
そのようなことは、無いはずですが。
それが、あるんだ。向こうからのご指名だ。
私共を介さずして話を進められては、困ります。
もしもボックスだ、心配ない。
分かりました。では、問題のお相手ですが、こちらの希望欄に必要事項をご記入願います。
必要事項と言っても、実は名前しか知らないものでね。

たいへん恐縮ですが、存じ上げません。間違いということは、ございませんでしょうか。
ないよ。
失礼ですが私、著名人で記憶していない人はおりませんし、何しろ人物名鑑とあだ名が付いているくらいでして。
うはは。地球上に存在しているのは著名人だけではないぞ。
で、では、まさか、50年分をどこの馬の骨とも分からぬ…失礼致しました。
心配するな、きちんとした馬だ。その名前をもう一度、よく見てくれ。新聞を読んではいないのか?
…申し訳ございません、IT企業関連と新興宗教の分野にだけは疎くて。
君の読みは、外れだ。私も、おめおめと50年分を1日にするつもりはない。
はぁ。
夢のトレードだ。
そうですね。
君は、夢を持ったことがあるかね?
もちろんです。
そうか、そうか。叶えたクチだったな。
ええ…ええ、そうなんです。

私は昔、野球が好きだった。それこそ、何よりもだ。
そうですか、私は合気道がそれでした。
君も知っての通り、我が家は代々、夢を口にしてはならない家系だ。
はい。
私も15歳で家を継ぐ訓練を受けることになっていた。それに異存はなかった。だが、不幸にも私には野球の才能があった。
貴方様が非常な野球好きであることは、存じ上げております。
そりゃあ、そうだろう。趣味が高じて、プロ野球チームまで無理矢理、買収した悪代官だからな。
いえ…それは。
遠慮せんでいい、世間の声は耳に届いてる。私は私の人生にはもう、未練がない。

それが、15歳の決断と何か関係があるのでしょうか。
ああ、決断ね。そう、野球との決別という決断を、少年は下した。
そうして、今の貴方様がおられると。
後悔はしていない。
そうですか、それは良かったですね。
と言うと、嘘になる。前置きが長くなったが、要するにトレード希望の彼は甲子園の星なんだ。
なんと。
彼はつてを伝って私にアポを取ってきた。是が非でも社長になりたいそうだ。
若い頃にありがちな夢です。そんな少年の夢などと引き替えに、貴方様の50年分を差し出す必要なんてありません。
だから私も条件をつけた。決勝戦の前日ならばと。そこまで勝ち上がることが出来たら、必ずお前の夢は叶うだろうと。
なんて無謀な選択を。
どちらにとってだ?
分かりません。実は私がトレード案件を扱うのは、今回が初めてなものでして。

明日が準決勝の日だ、おそらく勝つだろう。
それほどの実力の持ち主で?
そうだな、どちらに転ぶか分からないが原石であることには間違いない逸材だ。
ですが、明日、負けるという可能性も。
万が一はない。
…そうですか。
手続き一切を、引き受けてくれるかな?
分かりません。未成年ですし、それに…。
人道的にも納得がいかないか。
正直なところ、少年の年齢でトレード案件を適用するのはあまりにも。
じゃあ、これを聞いたらどうだ。少年は死ぬつもりだった。
若い頃にありがちな幻想と幻滅です。
夢のトレードだ。

決勝戦の前日、確かにお受けしました。
時計の針が日付をまたぐ時、だったな。
仰るとおりです。ご健闘をお祈り致します。
有り難う。


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俺は野球が嫌いだ。だけど、今年の夏は、忘れられない夏になった。
土壇場で見せた度胸と根性に大物の予感!!
当たり前だ。
あの人ならきっと、1日を50年に変えることが出来るだろう。だけどそれはもう、俺の手を離れた話だ。
逸材探しの達人は、勝負に勝ったのだ。


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『ショートショート ユウカイ』


手荒な真似は致しません。
それは何度も聞いた。問題は…
理由はまだ、お教えするわけにはまいりません。
金ならある。秘書につないでくれと言ったはずだ。

規定分は、きちんと頂戴しております。
規約違反だろう、実際。
重々、承知しております。お考えがまとまり次第、こちらのボタンでお呼びください。
あの馬鹿げた質問になら、答えんぞ。

天と地、どちらがお好きですか。
何を夢見たことを言っている?
では、空と海、どちらにロマンを?
どちらもクソだ。
承知致しました。お任せ下さい。

ところでだな、まぁ、話の分かる奴だと見込んでのことなんだが。
そろそろ、お時間です。失礼致しました。
は?
ぽちっとな。

じ、地震か?なんだ?何をした?
まずは、地からです。
なんだと?…地面が、天井が迫ってくる。
ご安心ください。きちんと身の丈で止まります。
次に海。
水が、蛇のように…。なんだこの部屋は。拷問部屋だったのか!
単なるからくり屋敷に過ぎません。かの名作の大ファンなもので。

わ、分かった、本気なら最初から本気だと言ってくれ。
もちろんです。お考えはまとまりましたでしょうか。
覚えている、当然だ。あの一件で失脚直前だったのだからな。
では、彼女の息子がその後どうなったかも?
…まさか、お前が?
いえ、あくまでも私は依頼を受けただけです。
水がもう、首もとまで来たぞ。これで満足か?
水面と口づけるまでは。
78歳か、長く生きた方だ。

どうですか、貝になりたいでしょう?
息苦しいほどに、不思議だ、記憶は蘇るものだな。
ここで空。
いつでも、空はどこまでも青い。
ええ。
彼女は…最後の俺を見た女だった。
と、いいますと?
金魚のような俺は、さぞ滑稽だろう。だけど、あの時の俺はもっと道化だった。
道化?
彼女が死んで、俺は人として生きることを辞めた。
50年です、ね?
そうだ。心残りはたくさんあるが、もう、いつ死んでも惜しくない。
そうですか。

ヘリコプターが来たぞ。
最後に、天です。
あの輪っかをくぐれば、行けるのかな?
両手を挙げてください。
こうか?
天に向かって手を合わせてください。

生かすというのか。
貴方に両手を揃える覚悟があれば、あるいは。
…分かった。すべて話そう。
ラストシーンは、約束通り、貴方がお決めになりました。

お前は、母親によく似ているな。
それより、五十肩の心配をなされたほうが。
貝にはならんぞ。
ご契約、誠に有り難うございました。

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