Planet of Rock'n Roll(第一部)
まったくこの国でこのルックスならば、ホワイトハウスでトイレを借りたいと申し出ても、ニッコリと笑って通してくれそうだ。
「チャック、一曲やろうぜ」
その日ラストのステージが終わり、チャックが楽器をしまおうとすると客席から声がかかった。
「よう、チャーリーか、いいぜ、上がって来いよ」
客席にはまだかなりの客が残っていて、肩からギターを下げたチャーリーがステージに上がってアンプにプラグを挿すとそれだけで拍手が沸いた。
ジャーンとワンストローク、エレキギターをかき鳴らすとどっと歓声が沸く、ジャズクラブながら、終演後のこのセッションを楽しみにしている客も多いようだ。
♪ゴー・ゴー・オージョニ・ゴー・ゴー!♪
チャーリーのギターとヴォーカルにチャックのサックスが豪快に絡み、ベースもドラムスもいないにも関わらず、ノリノリの熱い雰囲気が出来上がる。
(素敵な相棒ももういるみたい、思ったよりずっと簡単な仕事になりそうね)
マリリンは仕事を忘れて楽しむことにして、席を立ち、キュートなヒップを振り振りステージに歩み寄る。
すると、チャックが手を差し伸べて来た、マリリンに気づいた客席からは口笛の嵐、ステージに上がったマリリンがちょっと腰を振ってみせれば歓声が上がる。
(う~ん! なんてエキサイティングなの? いっそバックダンサーになっちゃおうかな)
マリリンはステージ上のチャックとチャーリーと微笑みを交わす。
女の笑顔は最高のメイクだ、二人の演奏はますます熱を帯び、マリリンも我を忘れて踊りに熱中した。
観客もお目当てのロックン・ロールに加えてマリリンの飛び入りに ボルテージが上がる一方。
「イェイ!」
「グレィト!」
「カモン!」
あまりに楽しすぎて、マリリンはもう少しで夢生成機を使うのを忘れるところだった……。
(続く)
作品名:Planet of Rock'n Roll(第一部) 作家名:ST