『ショートショート 序章~タイムトラブリィ』
『ショートショート 序章 理想』
あなた方の持ち時間は、一生です。
あなた方の一生は、永遠です。
あなた方の永遠は、一瞬です。
あなた方の一瞬は…時の狭間に存在しています。
復唱。
私達の持ち時間は、一生です。
私達の一生は、永遠です。
私達の永遠は、一瞬です。
私達の一瞬は、時の狭間に存在しています。
時間は、人を裏切らない。
しかし、人は時間を裏切って存在している。
時はいつでも正確に時を刻み、誰に対しても平等だからだ。
我々は、かけがえのない時間を、こよなく愛する必要がある。
なぜなら…。
人は皆、時間の上に存在しているからですね。
その通り。しかしながら、人という存在が時間の上に位置するという意味ではない。
例えて言うなら。
五線譜上の音符ですね。
ご名答。幸いなことに、我々は、音楽を奏でるという任務を与えられた。
まさに…まさに、光栄なことだ。スタッカート!
スタッカート! スタッカート!
****************************************
『ショートショート 実戦』
あなたの持ち時間は、80年です。
私は?
あなたは、50年です。
単純計算で、30年の差がありますね。
それはまぁ、人としての資質の問題です。
はぁ、そうですか。
ところで、50年の持ち時間をどこに割り振ろうと、あなたの自由です。
スタート地点は今にすれば、そうですね。おそらく、数時間は無駄になってしまうでしょうがものは考えよう。人生のうちにリアルな時間帯をもうけることが出来たという奇特な体験の持ち主ということにもなります。
えー、どういうことでしょう?
ああ、結構結構。話を元に戻しましょう。
大抵の方はですね、一呼吸おいて3年後くらいにスタート地点を置くことが多いですよ。
それですと、多少の変化が楽しめますし、すぐに馴染めるでしょう。
でも、これまでの、きっちり50年の私の人生は一体どうなるんです?
ふん、なるほど。これはですね、全ての方にご提供させていただいております私どものサービスの一環なわけでして。
はぁ。
ですから、別に無理にとは申しません。
えーと、私にはお金があまり無いと申しますか、なんと言ったら良いのでしょうか。
皆様、口裏を合わせたかのように同じことをおっしゃる。ご心配はいりません。もうしっかりご融資いただいてますから。
と、いいますと?
きっちり、50年です。要するに、これまでのあなた様の人生模様すべてですね。
…つかぬ事をお聞きしますが、何か、その、妻がこっそり投資していたとか、そんな話じゃありませんよね。
ふん、当たらずとも遠からずです。奥様にも私どものサービスをご利用いただいておりますので。
えっ、どういうことですか。まさか、あなた方と。
まぁ、そう興奮なさらずにお聞き下さい。この話は、奥様からも口外しても良いとの許可が出ている話ですから。珍しいケースなんですよ、大抵は守秘義務の行使を強要されますからね。
すみません、取り乱しまして。詳しく説明してもらえますか。
えぇえぇ、つまりは奥様は過去の時代を生き抜き、それを現在に充てておられる方なんです。お分かりになります?
はぁ。
大丈夫、あなたもこの先、50年分の人生が待っていますから。このサービスをご利用頂けるということは、きっちり生きてきたことの証明でもありますからね。
さっき、全ての人が受けられるサービスだなんだと言っていたじゃないか。実に胡散臭い話になってきたな。
左様ですか、一応はある一定の基準がありましてね。いやこれがなかなか、一筋縄ではいかない話なんですが、それはさておき。
いや、私も興味がない訳じゃないんです。だが、これまでの平凡な50年の人生も自分で言うのもなんだが苦節何年の繰り返しでしてね、それを否定されるのも面白くない。
ごもっともです。で、こちらの図をご覧下さい。
図?空年表ですね、なんの意味があるんです?
白地図みたいなもんです。ここに、あなたが予約を入れていくことになるわけです。どうですか、わくわくするでしょう?あっ、でも、出来れば人気時代は避けて頂きたいですね、人口過多になってはいけないとのエコ的思考にご協力頂ければ。
そう聞いてしまうと、どうしても人気時代とやらに生きてみたくなりますね。本当に驚きました、小説だけの話かと思っていましたから、そんな時空を越えた話など。
やっと、ご理解頂けましたか。人気時代は、どうしてもということでしたら、3割増し、つまりは3割引という計算になりますが、いかがなさいますか。
どういうことですか。
単純計算で、おおよそ35年間の人生計算ということになります。それでも、これまでの50年間に見合うものになるとは思いますよ。
あー、じ、じゃあ、その逆もあるということになるんですかね?つまり、その…。
えぇえぇ、おっしゃりたいことは分かります。残念ながら、超過分の人生は存在しないことになっているんですよ。
そこをなんとか。なぜ50年ですべてを投げ捨てる必要があるのか、私には分かりません。
そこまでおっしゃるなら、検討しないこともありませんが。
そうですか、いや有難い話だ。
しかし、お客様。私どもの保証期間の枠外となります。保証期間は、本日から算出して100年間。それを越えた枠をご希望なさる方には、プラス15年~30年、ランダムに加算されることになっております。
それでお願いします、いや助かりました。
スタート地点は、100年越えからは制限はありません。いつからになさいますか。
そうだなぁ、じゃあ、きりよく丁度100年後からにしよう。
では、ここに捺印を。
これでいいかな。
はい、ありがとうございます。契約成立です。あなた様の人生は、奥様がけりを付けて下さることになっていますから、ご心配なく。それでは、100年後に。
****************************************
どっから送られてきたのかも分からないし、ま、暇だから来ただけなんで。
ご足労ありがとうございました。ところで、文面には目を通して頂けましたか?
当たり前だろ、俺を若いと思ってなめんなよ。
とんでもない、手元の資料によると27歳でおられると。
そうだよ、けど生きてても楽しいことなんかねーし、なんか俺見てて楽しいわけ?
親父から裏金もらって職業斡旋とか、そういう類?俺、それでもいいと思って来てんだけど。ほんと、まじで夢とか言ってるやつクソ。
ふん、ところでですね、あなたの持ち時間は27年と今、決まったわけですが。
は?
いえ、これは非常にあなたにとって魅力な話でして、正直、ご紹介したくないくらいなんですが。要するに、あなたはこれまで頑張って生きてきた27年分の未来をここで買うことが出来るんです。
もったいぶる奴だな、俺今、金ねぇよ。
大丈夫、ここに来れたということは、なんの心配もいりません。
未来ねぇ、10年後ってどんななってんだろうな、日本て。な、気になんねぇ?
えぇ、そうでしょう、皆様そうおっしゃいます。
あなた方の持ち時間は、一生です。
あなた方の一生は、永遠です。
あなた方の永遠は、一瞬です。
あなた方の一瞬は…時の狭間に存在しています。
復唱。
私達の持ち時間は、一生です。
私達の一生は、永遠です。
私達の永遠は、一瞬です。
私達の一瞬は、時の狭間に存在しています。
時間は、人を裏切らない。
しかし、人は時間を裏切って存在している。
時はいつでも正確に時を刻み、誰に対しても平等だからだ。
我々は、かけがえのない時間を、こよなく愛する必要がある。
なぜなら…。
人は皆、時間の上に存在しているからですね。
その通り。しかしながら、人という存在が時間の上に位置するという意味ではない。
例えて言うなら。
五線譜上の音符ですね。
ご名答。幸いなことに、我々は、音楽を奏でるという任務を与えられた。
まさに…まさに、光栄なことだ。スタッカート!
スタッカート! スタッカート!
****************************************
『ショートショート 実戦』
あなたの持ち時間は、80年です。
私は?
あなたは、50年です。
単純計算で、30年の差がありますね。
それはまぁ、人としての資質の問題です。
はぁ、そうですか。
ところで、50年の持ち時間をどこに割り振ろうと、あなたの自由です。
スタート地点は今にすれば、そうですね。おそらく、数時間は無駄になってしまうでしょうがものは考えよう。人生のうちにリアルな時間帯をもうけることが出来たという奇特な体験の持ち主ということにもなります。
えー、どういうことでしょう?
ああ、結構結構。話を元に戻しましょう。
大抵の方はですね、一呼吸おいて3年後くらいにスタート地点を置くことが多いですよ。
それですと、多少の変化が楽しめますし、すぐに馴染めるでしょう。
でも、これまでの、きっちり50年の私の人生は一体どうなるんです?
ふん、なるほど。これはですね、全ての方にご提供させていただいております私どものサービスの一環なわけでして。
はぁ。
ですから、別に無理にとは申しません。
えーと、私にはお金があまり無いと申しますか、なんと言ったら良いのでしょうか。
皆様、口裏を合わせたかのように同じことをおっしゃる。ご心配はいりません。もうしっかりご融資いただいてますから。
と、いいますと?
きっちり、50年です。要するに、これまでのあなた様の人生模様すべてですね。
…つかぬ事をお聞きしますが、何か、その、妻がこっそり投資していたとか、そんな話じゃありませんよね。
ふん、当たらずとも遠からずです。奥様にも私どものサービスをご利用いただいておりますので。
えっ、どういうことですか。まさか、あなた方と。
まぁ、そう興奮なさらずにお聞き下さい。この話は、奥様からも口外しても良いとの許可が出ている話ですから。珍しいケースなんですよ、大抵は守秘義務の行使を強要されますからね。
すみません、取り乱しまして。詳しく説明してもらえますか。
えぇえぇ、つまりは奥様は過去の時代を生き抜き、それを現在に充てておられる方なんです。お分かりになります?
はぁ。
大丈夫、あなたもこの先、50年分の人生が待っていますから。このサービスをご利用頂けるということは、きっちり生きてきたことの証明でもありますからね。
さっき、全ての人が受けられるサービスだなんだと言っていたじゃないか。実に胡散臭い話になってきたな。
左様ですか、一応はある一定の基準がありましてね。いやこれがなかなか、一筋縄ではいかない話なんですが、それはさておき。
いや、私も興味がない訳じゃないんです。だが、これまでの平凡な50年の人生も自分で言うのもなんだが苦節何年の繰り返しでしてね、それを否定されるのも面白くない。
ごもっともです。で、こちらの図をご覧下さい。
図?空年表ですね、なんの意味があるんです?
白地図みたいなもんです。ここに、あなたが予約を入れていくことになるわけです。どうですか、わくわくするでしょう?あっ、でも、出来れば人気時代は避けて頂きたいですね、人口過多になってはいけないとのエコ的思考にご協力頂ければ。
そう聞いてしまうと、どうしても人気時代とやらに生きてみたくなりますね。本当に驚きました、小説だけの話かと思っていましたから、そんな時空を越えた話など。
やっと、ご理解頂けましたか。人気時代は、どうしてもということでしたら、3割増し、つまりは3割引という計算になりますが、いかがなさいますか。
どういうことですか。
単純計算で、おおよそ35年間の人生計算ということになります。それでも、これまでの50年間に見合うものになるとは思いますよ。
あー、じ、じゃあ、その逆もあるということになるんですかね?つまり、その…。
えぇえぇ、おっしゃりたいことは分かります。残念ながら、超過分の人生は存在しないことになっているんですよ。
そこをなんとか。なぜ50年ですべてを投げ捨てる必要があるのか、私には分かりません。
そこまでおっしゃるなら、検討しないこともありませんが。
そうですか、いや有難い話だ。
しかし、お客様。私どもの保証期間の枠外となります。保証期間は、本日から算出して100年間。それを越えた枠をご希望なさる方には、プラス15年~30年、ランダムに加算されることになっております。
それでお願いします、いや助かりました。
スタート地点は、100年越えからは制限はありません。いつからになさいますか。
そうだなぁ、じゃあ、きりよく丁度100年後からにしよう。
では、ここに捺印を。
これでいいかな。
はい、ありがとうございます。契約成立です。あなた様の人生は、奥様がけりを付けて下さることになっていますから、ご心配なく。それでは、100年後に。
****************************************
どっから送られてきたのかも分からないし、ま、暇だから来ただけなんで。
ご足労ありがとうございました。ところで、文面には目を通して頂けましたか?
当たり前だろ、俺を若いと思ってなめんなよ。
とんでもない、手元の資料によると27歳でおられると。
そうだよ、けど生きてても楽しいことなんかねーし、なんか俺見てて楽しいわけ?
親父から裏金もらって職業斡旋とか、そういう類?俺、それでもいいと思って来てんだけど。ほんと、まじで夢とか言ってるやつクソ。
ふん、ところでですね、あなたの持ち時間は27年と今、決まったわけですが。
は?
いえ、これは非常にあなたにとって魅力な話でして、正直、ご紹介したくないくらいなんですが。要するに、あなたはこれまで頑張って生きてきた27年分の未来をここで買うことが出来るんです。
もったいぶる奴だな、俺今、金ねぇよ。
大丈夫、ここに来れたということは、なんの心配もいりません。
未来ねぇ、10年後ってどんななってんだろうな、日本て。な、気になんねぇ?
えぇ、そうでしょう、皆様そうおっしゃいます。
作品名:『ショートショート 序章~タイムトラブリィ』 作家名:みゅーずりん仮名