「歴女先生教えて~パート2」 第二十三話
ギリシャでは商売繁盛でお金をたくさん設けていたフェニキア人に対抗して、ギリシャ人同士が団結して、ギリシャ・ルネサンスと呼ばれる文化活動が起こりました。
同時期にインドでは200冊以上もあるウパニシャッド(古ウパニシャッド、奥義書)が作られます。アーリア人たちは、因果応報という思想を持っていました。また、もともとインドに住んでいた先住民たちは輪廻転生を信じていました。この二つが結びついて、ウパニシャッドが生まれました。
輪廻転生と因果応報が結びつくと、「悪いことをしたら今度生まれ変わる時は毛虫になるぞ。良いことをしたら君侯になれるかも知れないぞ」という考え方になります。
ここから仏教の思想まで時間は掛かりませんでした。
中国では、神様に供えるための食器や酒器に当たる青銅器が発達していました。そしてその青銅器には難しい漢字(金文)が彫ってありました。青銅器を作り、漢字を彫れるのは金文職人と呼ばれる王朝の書記を勤めていた人たちです。
周という現在の長安のあたりに本拠地があった300年も続いた国家の歴史が青銅器には彫られていました。
地方の君侯たちも周に対する尊敬の念がこの歴史から学んでゆくのです。
中華とは、夏(か)や商(しょう)、周があった地域、「中原」のことです。周の都の辺りを、中華とか中夏、中国と呼んでいました。
中華思想とは結局漢字の魔力だったのです。漢字が広まって初めて周の歴史を読んだ人が、中華は立派であると勝手に思ってしまった。
漢字に書かれてあった事柄が一つの権威になっているのです。
漢字は東アジアにも広がりました。そして漢字が読める人は、または読み聞かせてもらえた人々は、中国という国は偉いと思ってしまいます。
時を経て、中国の側にも悪知恵を働かす人が出てきます。中華思想を意識的に利用するようになります。
元々は、漢字の力によって、勝手に周辺の人々が中華は偉い、と思い込んでしまったことが中華思想の始まりだったという訳です。(出口治明著:全世界史講義より抜粋)
作品名:「歴女先生教えて~パート2」 第二十三話 作家名:てっしゅう