ここに来た15 シンガポール
15 シンガポール
島国なのにユーラシア大陸最南端を謳う小さな国だ。
マーライオンが河口側から、内湾側に移設されて久しい。
お決まりの観光名所も見栄えがよくなり、人が多く集まるようになってきた。
内湾はとても澄んだ水、とは言えないが、超高層ビルが周囲を取り囲み、南国の太陽がその壁面に反射して、とても明るい印象となり、海もキラキラしているのがいい。
かつては野暮ったい国だという印象が強かった。
観光すると言っても動物園や公園くらいで、特に行きたいという施設はないので、中華街やアラブ街、インド人街を街ブラする程度だったのだが・・・。
最近は未来都市の様相を呈してきて、楽しみの多い街になっている。
人種は、マレー系、中国系、インド系、アラブ系、欧米系と多種多様なので、食事が面白い。
ホーカーズと呼ばれる屋台街が町のあちこちにあり、リーズナブルにエキゾチックなメニューをそろえている。
ちょっと辛めのメニューが多いが、どれも大体おいしい。名物のチキンライス、ラクサ(激辛ラーメン)、渡り蟹の鍋。ああ、思い出すとまた食べたくなる。
カットフルーツや生ジュースも、日本には無い珍しいトロピカルフルーツばかりで、これも外せない。
街はとても清潔で、ゴミは落ちていない。日本以外のアジアの国では珍しい。
罰則が厳しいので、品行方正な国民性だ。
狭い面積で交通渋滞を抑制するためか、普通の自家用車でさえ、高い関税がかけられ、日本の2〜3倍も価格がするそうだ。
その代わり、地下鉄等の公共交通機関はかなり便利で、よそ者の私でも気軽に出かけられる。
たまに来るスコールは、最近日本でもよくあるゲリラ豪雨なので、傘を持っていてもあまり意味がない。
近くのビルに入って雨宿りするのが常識。
普段の日差しはきついが、道路沿いの街路樹は大木となって連なり、見た目もいいし、日陰を作っているのもありがたい。
その下を名物の食パンに挟んだアイスクリームを食べながら散歩していると、よく目にするのが高級車だ。
日本でもおなじみのドイツ車のほかに、イタリアのスーパーカーもたまに走っている。
あまり車には興味がない私でも、ホテルの玄関口に置かれているロールスロイスやマイバッハを見ると、この国の将来がヨーロッパの避暑地のような場所になっていくのが想像できる。
私の仕事場は島の北端にあり、その食堂の窓から見える橋の向こうには、マレーシアの景色。
そこそこの都会だが、物価はシンガポールの半額だという。往来はほとんど自由で、向こうの方が安く買い物ができるとあって、国境の橋の交通量は多い。
但し、シンガポール出国前にガソリンの量を確認される。
それは、ガソリン税の確保のために、外国で安いガソリンを買わせないためだそうだ。
退職後はマレーシア側に住んで、こっちに遊びに来るのがいいのかと思った。
作品名:ここに来た15 シンガポール 作家名:亨利(ヘンリー)