ここに来た14 ソウル
14 ソウル(韓国)
ほんの1週間、韓国北中部の町にビジネスで滞在した際、休日に現地の友人がソウル観光に案内してくれた。
季節は冬で、朝は水たまりが凍るような気温で、どんより曇り空。
高速バスに揺られること1時間ほどで、ソウル市内のターミナル駅に到着。
看板の文字がハングルなのを除けば、日本の街にとてもよく似ている。
道行く人の顔やファッションも、日本人に近いので、外国へ来たワクワク感はほとんどない。
地下鉄に乗って、明洞(ミョンドン)まで行くと、若者ばかりの通りがある。日本で言う原宿のような感じだ。
雑多な街とは違い、洗練されたおしゃれな店舗が軒を連ね、日本の有名人が立ち寄ったという写真が、店先に貼られている。
女子校生が、制服姿で、買い食いをしている様子も日本と同じだ。と思ったら、何か違和感。
よく見ると、彼女らが竹串で突き刺しながら食べている、紙コップいっぱいに入った、2センチほどの茶色い塊は何だろう。
私は友人に聞いてみたが、彼はそれの日本語を知らない。
周囲を見渡して、それを売っている屋台を発見し、その茶色い物の正体が判った時には、カルチャーショックを禁じ得なかった。
“さなぎ”だ。
後でネットで調べると、蚕の繭から取り出した“さなぎ”(ポンテギ)だった。
試食してみるかと聞かれたが、断固お断り。
私は好き嫌いはほとんどない。外国で初めて目にする食べ物も、大概は抵抗なく食べるが、虫だけは例外でダメだ。
よくよく考えてみると、韓国では毎日毎回、唐辛子入りの赤茶色の料理を食べている。
どれを食べても同じ味という印象しか残っていないが、何を食べても必ず美味しい。
そうなれば、どんな食材でも、美味しく料理されているに違いないとは思うけど、虫はやっぱりダメだった。
若い女の子が、制服姿で食べるものじゃないと思う。
その後、東大門など観光名所を見て回り、お土産をたっぷり買って、お勧めの焼肉料理店に入った。
豚中心の焼肉が、こんなに旨いと思ったことはない。しかもすべてに唐辛子味噌を付けるので、また、どれも同じ味になってしまったが。
日本に帰国してからも暫くは、買ってきた唐辛子味噌を、味噌汁に入れて飲むほど、その味にはまってしまった。
作品名:ここに来た14 ソウル 作家名:亨利(ヘンリー)