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ワタリドリ
ワタリドリ
novelistID. 54908
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それでも太陽は赤く染まる!第13回「戯れる人影!」

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第13回 「戯れる人影!」

春の夜風の心地よい香りを感じながら、ひとしはすっかり遅くなってしまい、少し急ぎ足のペダルで自転車を走らせていた。

自宅に近づくにつれ興奮がじょじょに冷めるのが自分でもわかった。・・・と考えていると、ちょうど家の住宅のすぐ隣りの東中学にさしかかった時、門の所に2人の人影を見つけた。

桜の花びらの余韻がかすかに舞う街灯の灯りだけではっきりとは見えなかったが、1人は女の職員でもう1人の小さな姿は少年のようだった。
まだ声変わりをしていない生き生きとした無邪気な甲高い声量が静けさを増した辺たり一面の暗い道並みにひびいている。

眼鏡をかけた女性職員は子供をあやすように少年に向かってさよならをしている。
G・H組の担任の渡辺さよだった。G・HのGは自閉症のG、Hは発達障害頭文字からきているようで、まとめてG・Hと呼ばれている。

するとあの少年は特殊クラスの生徒だったのか!それにしてもずいぶん遅くまで居残っているな。新入早々悪さでもしたのか!

ひとしは横目で追うように反対側の街灯の横道をするりと通り過ぎながら、今日始業式で前の方の新入生でふらふらとして落ち着きがなかった生徒を彼の小柄な身長と後姿とを重ねてみてひとり納得をする。

面倒見の良い保母さんのようにみえる渡辺さよは、お母さんほどではないが叱る時はしっかりと叱る教師で、有無をいわせぬ甲高い生徒をしかりつける叫び声がよく学校の廊下中にひびいてきたから、生徒たちの間では結構印象深い。

ひとしはそんな事を思い出しながらとっくに着いていた自宅の住宅の自転車置き場に自転車を止めるとかばんや荷物を手にすばやく鍵を外すと、走るように電灯のついた3棟の入口に飛び込んで、階段を得意の二段飛ばしで駆け上っていった。