幻想人手帳
旋律の指揮者
彼女はいつも軽快な足取りで、世界を駆け回る。
そこは幾重にも重なり交じる、旋律の世界。
その世界の中を、彼女は決して迷わない。
さまざまな歌を聴き、自身も歌を生み出していく。
彼女の声に包まれた音符は、儚く輝き始めた。
音域は落ち着くことを知らず、広がり続ける。
しかし旋律は、まるで譜面があるかのように、統一された美しさを秘めていた。
それは終わることのない交響曲。
すべての指揮を彼女がとる。
その曲に魅入られた者は”名曲”と呼称し、感慨のない者は”迷曲”だと呼称した。