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嫁菜寿司

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昔は、嫁いだ先の娘に里の母はそういつでも会いに行けるというものでもない

娘は婚家でどうしているだろうか
遠慮無く食べることが出来てるだろうか

そんなことを心配するのはきっと母心というものだろう

嫁菜が咲く頃
里の母は、嫁いだ娘に会いに行くとき、手土産に、娘が好きな嫁菜寿司を作ったからとお重を持って出掛ける

娘が好きなものでも直接娘に渡せるわけはない
姑に粗末なものですがこのようなものを作りましたからと、お重をそのまま姑に預ける

母が帰った後
姑は、そのお重を開けてみると
緑色1色の嫁菜の茹でたものが敷き詰められていて・・・
あらまあ、こんなもの・・・と思った姑は

嫁にそのまま丸ごとのお重を里のお母さんが持ってきてくれたものだからと渡してくれる

娘はお重に箸を付けると
嫁菜が敷き詰められていたその下にはご飯が、そしてそのご飯の下には
娘の好きな、ご馳走がいっぱい出て来る…
娘は母の気持ちが嬉しくて、泣きながら食べるという

それが嫁菜寿司・・・

この話を子ども達にしたとき
お母さん、そのお姑さんだって、自分が嫁に行ったとき、嫁菜寿司を実家のお母さんが作ってきたんじゃないの?

その菊の葉っぱの下にご馳走が入っていることをわかっていながら、そのまま嫁にあげるのはきっと優しいからだよね^^

子どもがそう言ったのがなんだかとっても嬉しくて^^

昔のお重は風情があるね
これが透けて見えるタッパだったらそんなことすぐわかっちゃう^^
そんなことを思いながら
野菊が咲くとこの話を思い出す

お母さん、今度お弁当をその嫁菜寿司みたいに作ってみてよ
見たところ日の丸弁当で、その下におかずがいっぱい入ってるっていうのはどう?
イヤ、お母さんは意地悪して、日の丸弁当が最後まで日の丸弁当って事もあると思うよ^^

目の前にあるそのことだけを見て、まずそうとか、粗末なものとか見たままで判断しちゃいけないんだね

ちょっと食べてみたら、それがすごく美味しかったり、その奥に何かすごく良いものが入ってることもある

人間だって同じだと思うんだ、ちょっと見だけで判断しちゃいけないって
話してみて、付き合ってみたら、すごく味のある人ってことだってあるんだもの

イヤ、みんな善人というわけにはいかない、人のつきあいは、怖いこともあるから気をつけなくちゃいけないけどね^^
作品名:嫁菜寿司 作家名:とことん