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村上春樹文体を真似たつもりの話

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本文





なんということだ。息子がニートになって早、10年。いつか自立するかと思い温かい目で見ていたが、気付いたら息子は引きこもりになっていて部屋からも出なくなっていた。

家族としての会話は一切ない。台所でスパゲティーを茹でながら私は悶々と今の自分あり方を考え直していた。
何が悪かったのか、どこで息子の教育方針を間違ってしまったのか

スパゲティーが茹で上がるとミートソースを絡める。普通の家族なら「ごはんですよー」と息子を呼びに行きたいところ。しかし、最近の息子は私が声をかけも返事をしない。いくら部屋をノックしても返事がないから、無理矢理こじあけようとしたら、「死ね」と一言だけ言われた。

以前に一度だけ、今後の将来を話し合うために無理やり部屋に入ってからというもの、息子の引きこもり度はエスカレートしていった。まるで自閉症者の様にかんしゃくを起こしたり、モノに対して暴力にうったえるようになった。

息子に何があったのか、私が部屋を覗いた際にVRゲームが見えたが、あれで遊んでいるのだろうか? だとしたらあんなモノ買うべきでは無かった。ゲームの世界を逃げ場にするのなら、あんなゲーム、壊さなければいけないだろう。

しかし、本当にそんなことをして大丈夫なのだろうか、私は引きこもりを扱う専門家を尋ねることにした。

訪ねた先は、引きこもり相談のボランティア団体で、同世代の女性が私の相談相手になった。

「息子さんはVRをしているんですね?」
相談を一通り聞いた担当者が最初に言った言葉だった。つづけて担当者は言った。

「息子さんと話し合うのは一旦止めて、息子さんを理解するのに力を注ぎましょう」

と、言われても、理解するも何も息子には歩み寄ることすらできない。息子には部屋に閉じこもり、私が一声かけようものなら、かんしゃくを起こして、私の声、言葉を遮ってくる。理解するもなにも、どうしていいか、わからないから、相談に来ているのに。

そもそも息子は気弱なだけで、現実からただ逃げているのであって、こちらから理解する意味なんてあるのだろうか? 。しかし、担当者はあくまで私に原因があるかのように考えているようで。

そんなはずはないだろう。私に人としての落ち度があるはずないのだから。
この担当者は何もわかってない。

「教育に失敗なされたから、息子さんは自立できてないのですよ?」

それは違う。私が息子を養い甘えさせてしまったのは事実だとしても、息子はそれに甘んじてるだけなのだ。実際、同じような立場の引きこもりでも、ちゃんと自立した事例を知っている。この担当者はそんなことも知らないのか?

この担当者は一貫して私から息子に歩み寄るよう勧めてきた。しつこいので半分聞き流したが、VRを使って息子と話し合う提案には望みがありそうに感じた。
しかし担当者はそれをしないそうで、あくまで私にさせたがる
それを拒り続ける私を、まるで器の小さな男かのように見下しの目を向けてくる。私は腹が立ち、つい、やる約束をしてしまった。


担当者は息子がやっているだろうVRゲームを教えてくれた。オンライン型の冒険ゲームらしい。ネットで友達を作ったりしてワイワイ遊ぶものだそう

最近のVRシステムは脳をゲーム世界にリンクできるそうで、ヘルメット型の機械を被ることで誰でも手軽にリアルな冒険を楽しめるらしい。

それが原因で息子が引きこもってるというのに、まさか私がオンラインゲームをやらなきゃいけないなんて。

担当者「引きこもり40歳以上の人口が50万人を超えてますから、多くの人がこのゲームに参加しています。まずは父親とは名乗らずに、ゲームだけを純粋に楽しんでみてください」

楽しんでくださいと言われても、面白いかは私が決めることである。勝手に決めつけないでほしい
いくら、バーチャルといえネトゲの延長である。ネトゲなら何度かプレイしたが全く面白くなかった。

心の中で不満を呟いている間にヘルメットデバイスを被される私

担当者「ログインIDはこちらで用意しますのでプレイヤー名を決めてください」

名前なんてどうでもいいですから、好きに決めてください。

「では息子さんの共感を得やすいように、息子さんの名前から一字使いましょうか」


言葉半分は聞き流している。かなり適当な受け答えをしていた。プレイヤー名は清十郎に決まった。その他の設定も決めてもらい

清十郎の情報は
年齢40歳
プロフィールひきこもり
ゲーム世界での職業はゴーストハンターに決まった

担当者「では清十郎さん、しばらくお休みなさい」



つづき
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