フィラデルフィアの夜に11
手が、その思い通りに。
手早く、素早く、曲げ、組み立てていきます。
願いを。
願いを、その形。
ベットを作っていきます。
綿埃を、寝るところに敷き詰めて。
テーブルを作っていきます。
錆びた鉄板を使って。
椅子を作っていきます。
針金を編み込んで。
ストーブを作っていきます。
赤い針金中に入れて。
その他、日々意識なく使うだろう物品。
そして人を、作っていきました。
多くの、多くの。
落ちていた何かの骨を、体の各所に。
生きていると言いたいのか。
それは、大量に。
手が、手早く、素早く、動いていっていました。
それはきっと目にも止まらなかったのでしょう。
朝日が差した、小道。
不法投棄の山があったそこ。
ベットが、テーブルが、椅子が、ストーブが、物品が、人が。人々が。
敷き詰められていたのです。
それは、骨の欠片を体のどこかに持つ多くの人形たちが、平和に日常を送っている。
街を形作っている。
そう思える光景でした。
ただしかし、どこから、誰の骨なのか。
人形の骨を、集め、パズルのごとく組み立てました。
人。
一人の誰か分からない、古い古い骨が現れました。
誰がこの骨を。
どうやって一晩で、この針金の街を。
なにもわからないまま、骨は埋葬されました。
ただ唯一、両手だけがどこにも存在しなかったといいます。
針金の街は誰にも見せる事なく保存されます。
人形の骨が使われた部分には、プラスチックで。
その保存された箱の暗闇の中、両手は人知れず、針金を。
手早く、素早く、曲げ、組み立てていきます。
あの骨となった人間の、願望を表すために。
作品名:フィラデルフィアの夜に11 作家名:羽田恭