花火を見ながら
「もうこんな日は来ないのねぇ」
祖母がポツリと呟いた。
「確かにね、祭りのスポンサーもケチくさいこと言ってないでお金出せばいいのに」
そうなのである、この催しは30年前から続いているのだが、昨今の不景気の煽りを受けてスポンサーがつかず、今年で最後になってしまったのだ。
「でも姉さん、今年はこんなにお客さんも来ているし、続ければいいと思うの」
外を見ないで座っていても、喧騒は聞こえていて、かなりの人が見物にきているのが分かる。
「今年で最後だからね、それが分かっててみんな来ているの。例年はもっと少ないじゃない」
「そうねぇ、こんなに賑やかなのもいつぶりかねぇ」
祖母は目を細めながら、とても懐かしそうだ。
こんなふうに姉と祖母の三人で、花火を見ながらくつろぐことができなくなってしまう、そう思うと寂しくなってきてしまった。
「今年で最後かぁ……」
「お金の問題じゃ仕方ないわよ」
最後の花火が打ちあがる。そして喧騒だけが残り、夜も更けていくのであった……