レイドリフト・ドラゴンメイド 第29話 恨みと走る どこまで
未来文化研究部部長。
能力は真空崩壊。
空間を安定した状態から不安定な状況に変える。又はその逆。
対象のエネルギー状態を変えることで、使い消費する、という物理学の基本現象を、のばしたり縮めたりできる。
今はその能力で明美の能力を安定化させ、無効化したのだ。
また、自分の落下速度もおさえた。
ミンファは、手にした十字を背中の鞘に収めた。
それは剣だ。
柄とつばは金色に輝き、刀身に刃はついていない。
切っ先も丸い。
メイメイから受け継いだ聖剣だ。
それにより能力を強化、拡大できる。
「もうよしなさい! 」
ミンファはズイッと明美に詰め寄り、そう力強く話しかけた。
しかし、その後小声で語りかけた言葉を、ドラゴンメイドの音響センサーは聞き洩らさなかった。
「迎えに来ました。首尾はどうですか? 」
明美も同じように答える。
「首尾は良好」
そして、こういう場合にふさわしそうな、嘆きの声色に変える。
「分かった! さっさと連れて行きなさい!
あんた達も、もどりなさい! 」
あんた達とは、ドラゴンメイドと士官候補生5人だ。
スタジアムに向かい、みんなで歩く。
牢獄にとらわれた2人は、2号が魔法で引き寄せた。
「あんた、ばれてるわよ」
ドラゴンメイドも、このひそひそ話に加わることにした。
「ばらす気はないけど、意図は聴いておきたい」
友達として。
「あの言葉は半分以上、私の本心よ。
問題は彼らが聴いてくれるか、聴いても実行してくれるかだけ」
明美がそう言っただけで、ミンファとサラミは答えなかった。
だが、自分たちで仕組んだのはわかる。
その後の荷物の受け渡しは、予想外にスムーズに行えた。
智慧は操った窒素で、ダッワーマとクライスの車体を橋のようにつないだ。
そして車内と、窒素の橋の中に人を載せていく。
まるで列車だ。
生徒会は、先ほどの悶着がなかったかのようにキビキビと準備した。
そののち、撤退した。
行先は浄水場の方向。
その向こうのフセン市役所。
入れ替わりに、文字道理、街全体を揺るがす音が近づいてくる。
2台どころではない、その何倍も何十倍も。
多国籍部隊の戦車だ。
もうすぐ、合流する。
作品名:レイドリフト・ドラゴンメイド 第29話 恨みと走る どこまで 作家名:リューガ