小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

フィラデルフィアの夜に9

INDEX|1ページ/1ページ|

 
フィラデルフィアの夜に、針金が飾られました。
街角、道路、壁、柱、側溝の網、線路、フェンス、空き地、窓枠、街路樹。
その他、たくさんの場所に絡みつけられて。
 誰も見る事のないまま、絡みつけられて。

 夜に、人影。
落ちている針金。
気付かれる事もなく、曲げていき、よくわからない物を作り出す。
そして、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
 近くの、また別な所で。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
ここは多い。
すぐ隣。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
その上。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
壊れた窓。その中。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
残されてしまっている、者。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
名前を。筆記体の要領で。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。
死んでしまったものの。
曲げて、掲げて、飾り付けて。絡み巻き付け。

 名前が、知られる事も無く街々に表されます。
誰も知らない死んだ人々の。
度重なる争いで、忘れ去られたままの名前が。
静かに、あります。
 一度気付けば、次々に存在します。
なくならないように絡みつけられた、名前が。

 夜に、一つの人影が、名前を残していきました。

 朝、昼、明るくなり人々が行き交います。
誰も気付かないまま。針金に、名前に、人がなくなった事に。
 人影が、残そうとした事さえ。

 ただ、小さな目が、それを見つけました。
次々に見つけ、あまりにも次々に見つけてしまい、本当に本当にたくさん見つけてしまい、ここを去って行きました。