フィラデルフィアの夜に3
暗い地下室、彼女は固い針金に噛みつき、折り曲げています。
寂しくて寂しくて、それから逃れるために針金をなんとしても曲げたかったのです。
ギッ、ギッ、と針金の音が響きます。
口に針金を含み、さらに小さく折り曲げていきます。
針金に歯が負けそうになりながら、小さい球体を針金で作りました。
上がった息を整えると、手に何かが当たりました。
それは電池で。
枯れ木のような手を伸ばし、薬指と小指に挟んで拾い上げた。
それは輝く宝石のようで。
小さい球体の下、針金で巻き付けて行きます。
不器用に、不器用に、不器用に。
歯で。
友達が出来ました。
小さい針金の顔の、乾電池の宝石を胸にした。
光照らし出されるような、友達が。
見渡せば、暗い部屋には、宝物だらけで。
方々に光るアルミホイルが、危ない透明なガラス片が、重く鈍い光沢の蓋が。
彼女は再び針金を手にしました。
さっきよりも手に力を込めて。
それからどれだけ時間が経ったのか。
開けられた地下室に、異常な世界が生まれていた。
ありとあらゆる物が針金で結えられて、縛られて、つながって。
異様な臭気に、不思議な輝きを放つ、人形と化したゴミたちの針金による世界が。
少し目をやれば優しさを感じさせる、よく分からない針金の。・
「このまま眠って貰おう」
そう、手を付けなかったと言います。
人知れず、その地下室の話は伝えられます。
ごくたまに、訪れる人がいるとも。
その臭気で威嚇されるも、なぜか優しさを感じさせる、小さな世界に。
作品名:フィラデルフィアの夜に3 作家名:羽田恭