奥行きのある世界より。
頬をかすめる風は、朱(あか)く、狂おしい香りで、
浮かぶ幻 堕ちる事実 昇って逝くは貴方の魂
―――――私の世界に生きたとしても、腐敗と永遠に
飲み込まれるのみと、理解(わか)っていた故か。
貴方の世界は美しく、永遠という醜さなど蔓延ってはいない。
見られる夢は、何時か終わるものだけ。
降りしきる雨ですら、止まないものは無い。
だから、
美しいあなたの、そのあたたかい手を、
醜い私に、もう一度さしのべて。
この世界から、この醜い世界から、
救い出して。
作品名:奥行きのある世界より。 作家名:西秋 鏡夜