お腹が空いた!
再び教室に帰って来た綾さんは、佳奈さんを涙目で見ます。
「…入ってないって言ったよね?」
済まなそうな顔の佳奈さんに代わって、一子さんが答えました。
「わさびは、入ってなかったでしょ?」
「─ カラシが、入ってた!!」
「そりゃ…私が、入れたからね。」
「あれも、一子が作ったの?」
「身に染みた? 盗み食いの罪深さ」
俯く綾さんに、佳奈さんがハンカチを差し出します。
「もう、私や一子ちゃんの鞄を漁って 勝手に中の物を食べたりしちゃだめよ?」
ハンカチで涙を拭きながら頷く綾さん。
一子さんと佳奈さんは、顔を見合わせました。
佳奈さんが微笑みます。
「口直しに…これを食べましょう」
目の前に出て来た3つのシュークリームを見て、綾さんが首を横に振ります。
「大丈夫だって。これは、普通のだから」
勧める一子さんに、綾さんは怯えた声を出しました。
「先に食べてみせて!」
やり過ぎを責めるように、佳奈さんが一子さんを肘で突きます。
自分たちの分のシュークリームを、2人は手に取りました。
まずは半分に割って、中身を見せてから、口に運びます。
その様子を、じっと伺う綾さん。
2人が食べ終わるまで待ってから、残された自分の分に手を伸ばしました。
恐恐と半分に割って、中身の匂いを嗅いでから、ほんの少しだけ舐めてみます。
「…これは<普通>のシュークリーム。」
安心した綾さんは、やっと口に頬張ったのでした。。。