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包み状

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「上新田村での流行病、人死は14人で御座います」

 右月は領主に言上しました。

「…吟味の結果、最初に あの死病に掛かったのは…」

「おスミ…だったのだな」

「3月11日に…森で奇妙な虫に刺されたのが、事の始まりとの見立てで…」

「─ あの文の通りに…なってしまったのか。」

 何か言いたげな右月に、領主が気が付きます。

「どうした?」

「…誠に、申し上げ難き事で御座いますが」

「またか?」

 頷いた右月は、前の2通と同じ様な文字の書かれた包み状を 領主に差し出しました。

「その方…もう中身を改めたのか?」

 頭を振って否定した右月に、領主は問い掛けました。

「茶吉、その方の存念は?」

「包みを開かずに、燃やしでもした方が…良いかと存じます」

「…」

「─ まだ何もしていない者を、錯乱して人を殺めるかもしれないからと、捕らえて首をはねる訳にも参りません。」

 右月は、領主と目を合わせます。

「ましてや…死病を振りまくかも知れないと言う戯けた理由で、童女を…」

 領主は、右月に頷いて見せました。

「余も…そう思う。」

「─」

「事が起こる前に判っても、御し様がなら…知らぬ方がマシよな」

 姿勢を正した領主は、右月は命じます。

「今後、その包み状を目にしたら 即刻灰にする事、しかと申し付ける。」
作品名:包み状 作家名:紀之介