告白
そう言って楽しそうな表情をした。開くとそれは由美が大好きなお菓子の店のクッキーだった。
「これ、私が一番好きなクッキーなの。どうして知っていたの?」
「それは由美ちゃんに気に入って貰いたくて伝手を頼って訊きまくったんだ」
「わたし、てっきり雅人くんは里沙と交際していると思っていたわ」
「里沙ちゃんには悪いけど、断らせて貰ったよ。僕は前から由美ちゃんの事が好きだったから」
意外な雅人の言葉だった。
「でも里沙のほうが背が高くてスタイルも良いのに」
「僕は外見では余り気を引かれないんだ」
「髪も長くて綺麗なのに」
「僕はショートカットの子が好きなんだ。と言うより好きになった子がタイプになるんだよ。男ってそう言うものだと思う。どうかな僕と交際してくれるかな」
「私でよかったら喜んで……」
「良かった……一つお願いがあるのだけど?」
「なあに?」
「交際をする事になったら由美ちゃんを思い切り抱きしめて見たかったんだ」
「ほんとう?」
「ああ」
そう返事をすると雅人は由美の背中に手を回して包み込むように抱きしめた。その時由美は幸せを感じた。好きな人に抱き締められる喜びを体中に感じた。
あれから十年。二人は結婚した。居間のソファーに座った由美の膝に雅人が頭を落として膝枕をしているようにする。
「お腹に耳を当てて聞こえた?」
「う~ん正直聴診器でもないと判らないかな}
「そうよね。でもしっかり育っているからね」
「うん。楽しみだよ」
あと二三ヶ月で二人の愛の結晶が誕生するのだ。由美はあの時、自分から告白しなくても雅人の告白を受け入れただろうが、そうなったら今の二人の姿とは少し違っていたかも知れないと思っている。あの時の勇気がその後の自分の人生に大きな影響を与えたと由美は思っている。
了