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自動運転

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「三度告白して三度同じ理由でフラれるなんて、あいつより俺の車のAIのほうがよっぽど学習能力がありそうだな」
 月曜の朝。車に乗っている長身痩躯の青年Mが、スマートフォンを覗いてしゃべっている。自動運転が普通になった今では、もちろん、法的にも一切問題は無い。
 液晶画面の中の相手が答える。
「それがさ、あいつ何て言ってると思う?」
「何て言ってるの?」
「初詣のおみくじで大吉が出たから行けると思った、って」
「しょ、しょおも無えええええ!」
「神様なんていないんだから、それよりとっととおやつを減らすべきだよな」
「全くだ」
 ……とその時、突如として、Mの体はすさまじい衝撃と大きな音に包まれた。事態が具体的にどう進んだのかは分からないが、気づけば車は電柱に突っ込んでおり、フロントガラスも割れ、Mの腹部に激烈な痛みがあった。
「……うう……あああ……いったい何が……」
 Mのうめき声に、AIが答えた。
「申し上げますマスター。私たちの車が交差点に青信号で進入したところ、右側より信号無視で進入してきた一・五トントラックに衝突されました。この模様はドライブレコーダーに記録されており、裁判に至っても、私たちが勝利する確率が百パーセントで間違いございません。なお、既に救急車を手配致しました。I市西病院を出発し、この座標まで平均八分二十三秒で到着します。あるいは、信頼度九十五パーセントで信頼区間七分九秒から九分三十七秒において到着します」
「そ、そうか……うううっ、か、神様……」
 長身痩躯の青年Mに、AIが答えた。
「申し上げますマスター。おやつを減らしましょう」

【完】
作品名:自動運転 作家名:Dewdrop