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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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--- 1 夏休み開始



 川内と神通の着任式を終えた翌週月曜日は那美恵たちの高校の終業式の日だった。翌日からは、1ヶ月と少しの長い夏季休暇が始まる。那美恵はもちろんのこと、流留と幸の二人も、この夏休みを艦娘の活動に費やそうと考えていた。
 終業式が終わると、生徒会は一学期の生徒たちの総まとめとしての申請書類・報告書の整理や教職員への報告に追われることになる。普通の生徒たちが午前中で早々に帰るのに対し、お昼すぎまで残ることになっている那美恵たち。さすがに艦娘部のほうに気が回らない那美恵は、生徒会室の扉を元気よく開けて入ってきた流留と彼女に付いてきた幸に、珍しく慌ててイッパイイッパイという様子を見せて言い放つ。

「ゴメンね二人とも。今日はあたしたち、生徒会の1学期最後の仕事でめちゃ忙しいの。だから鎮守府へは行けそうもないから、もし行くなら二人で勝手に行っちゃって。二人とももう正式に艦娘だから、いつでも好きなときに鎮守府行ってもいいからさ。よろしくね!」

「あ……はーい。」カラッとした返事で流留は返した。
「……和子ちゃん……も?」
 幸は那美恵のことよりも、友人の和子の方を気にかけていた。

「うん。どっちかというと、三戸くんと私のほうが激務なので。」
 そう言い終わると資料の校正や確認で忙しいのか、和子はすぐに視線を手元に戻す。幸は友人の姿を見てそれ以上口を挟むのをやめた。
 会計も兼ねている三戸は電卓を叩いたり資料に書き込んだりとせわしなく視線を動かしていた。チラリと見える横顔が凄まじく真面目な表情をしていたため、さすがに空気を読んだ流留は三戸に声をかけるのをやめて呆けた顔で眺めるだけにした。

 那美恵も早々に目の前の資料の確認と捺印のために視線を戻した。流留と幸はここにいるべきではないと判断し、那美恵たち4人の邪魔をしないよう、小声で話を合わせて生徒会室を出ていった。

「さっちゃん。あたしたちだけで今日は鎮守府行こうか?」
「……はい。」

 行く前にせめて顧問の阿賀奈に一言断ってからいこうと幸が密やかな声で提案したので二人は職員室に行き、阿賀奈に会うことにした。
 職員室の戸をノックして断ってから入り、阿賀奈の姿を探していると別の先生が話しかけてきた。誰を探しているのか尋ねられた流留は正直に伝えた。するとその教師は、阿賀奈など若手の教師は終業式の会場の片付けをしているという。
 さらに何の用か尋ねてきたが、流留達は急ぎの用事ではないのでいいですと断って職員室を後にした。

「なんか、みんな忙しいんだねぇ……。」
「そう……ですね。」
「あたしさ、今まで先生のこととか生徒会のこととかまったく気にしたことなかったからさ、終業式の日がこんなに忙しいんだって知らなかったよ。あたしら普通の生徒が早く帰れるのに、大変だよね〜。」
 幸は流留の気持ちの吐露にコクリと頷いた。

 結局流留と幸は二人で鎮守府に行くことにした。


--

 学校から駅へ、電車に乗って鎮守府のある駅へ向かう二人。駅の改札口を出て周りを見渡すと、お昼時のためか人が多い。学生は夏休みに入る頃だが、会社員など勤め人は普通に平日なのだ。

「そういえばさ、西脇提督って会社員だとか言ってたじゃん。」
 幸はコクリと頷いて黙って流留の言うことの続きを待つ。

「あたしたち学生が夏休み入ってるのに、会社でも仕事して、鎮守府でも仕事して、マジ大変そうだよね〜。」

 一拍置いて流留は再び口を開く。
「……あたしさ、小さい頃一緒に遊んだ従兄弟の兄ちゃん達いるんだけどさ。大分歳離れてたから、あたしが中学行く頃にはもう働きだしちゃってほとんど会えなくなっちゃったんだ。会いたいって思った時にはいつも仕事仕事。イラッとしたけど、それと同時に働くのって大変なんだなぁって思ったよ。といってもあんま実感ないからホントにただ漠然に思っただけなんだけどさ。」
 幸は話の筋が見えず、前髪で隠れた顔に?を浮かべた表情をする。

「つまり何が言いたいかっていうとさ、なんかいろいろと思い出しちゃって、提督のこと従兄弟の兄ちゃんみたいに思えてくるんだ。これ他の人には内緒だよ?さっちゃん口硬そうだから言うんだからね?」
 照れ笑いを交えながら語る流留。幸は突然流留から妙な独白を聞いて困惑するも、なんとなく話がわかってきたことと、信頼されたことに嬉しさを感じたので了解代わりの頷きを2回した。

「従兄弟とは今も全く時間も都合も合わなくて会えない分、代わりに提督を……そのさ、いたわって喜ばせてあげられたらなって思うんだ。どうかな?」
 目を輝かせて自分の思いを打ち明ける川内。それは那美恵と凛花が抱いているものとは、方向性が違っていた。
「うん。それ……いいと思います。」
 ようやく言葉に出して相槌を打った幸。流留の考えと思い、経緯はどうであれ、自分たち艦娘の上司にあたる西脇栄馬という人の労をねぎらうのは良いことだと幸は賛同した。

「といってもさ、あたしにできることは何かって考えたらさ、趣味が合うからせいぜいその話で気を紛らわせてあげるくらいかな。何か物あげたりするのはなんか違う気がするしさ。」
「……内田さんの思うままに、やってあげるのが一番いいと思います。」
「そっか。そう言ってくれると自信付くわ。ありがとね、さっちゃん。」

 流留の突然の思いの吐露。幸は心の奥底では流留に若干の苦手意識があるのを感じていたが、この同級生の人となりを知り、同級生として・艦娘の同期として、なんとかやっていけそうと実感を沸き立たせた。

 このことは流留から信頼されて言われたとおり、誰にも言わないことを心に誓う幸であった。


--

 喋りながら歩き、気がつくと鎮守府の手前の交差点まで来ていた。そのまま進み、二人は鎮守府の本館手前の正門にたどり着いた。

「そういえばさ、なみえさんの案内なしで二人で来るのって初めてだよね。」
「はい。」

「なんか、一人前の艦娘って感じしない?」ニンマリとした顔で自信のある表情をした流留は隣を見て言った。
「あ……実は私も……。」
 流留の考えていたことは幸も考えていたので、打ち明け合うと二人はなんとなしにクスクスと笑いあった。
 本館の手前まで来ると、笑いあっていた二人は気を引き締めあう。
「さて、なみえさんの言ってたように、鎮守府に一歩入ったらお互い川内と神通だね。」
「……はい。」
「じゃあ行こう、神通。」
「はい、うち……川内さん。」
 那美恵と決めた通りの呼び名、それを使う。

 流留は頭の中で切り替えができており、幸を初めて神通と呼んだ。しかしながら彼女とは異なり幸は言い慣れず気持ちの切り替えも完全にできていなかったのか、流留を本名の苗字で呼びかけてしまう。
「ちょっと神通、ちゃんと切り替えてよね。」
「よく、川内さんは……気持ちの切り替えできたね。」
 川内はフフンと鼻を鳴らして答えた。
「だってあたし、ゲーム好きだし、こういうロールプレイングゲームみたいな成りきりも一度マジでやってみたかったんだもん。だからこういうの平気だし結構ノリノリなんだぁ。艦娘ってあたしにとって天職になるかも?」