桔葉さんのバレンタイン
今日も。
「…時間、掛かり過ぎ。」
にこにこ顔で部屋に入ってきた葉月さんを、桔葉さんが軽く睨みます。
「今日も見ちゃいました! 道野さん♡」
顔を上気させた葉月さんは、手に下げた 丸に十のマークの<ドラッグ島津>の袋を、桔葉さんに手渡しました。
「…幸せそうで良いよね。葉月ちゃんって。」
「ちゃん付けするの 止めて下さいって、言いましたよね?」
不服そうな声の主に、桔葉さんは向き直ります。
「姉なのは、年齢だけでしょ?」
葉月さんは、抗議の意志を示すために唇を尖らしました。
「反論出来ないからって、そう言う顔しないの…は・づ・き・ちゃん。」
拗ねた視線を受け流した桔葉さんは、猫なで声を出します。
「『お姉さま』って呼ぶ様に頑張るから…手伝ってくれる?」
「─ 手伝ってあげても…良いですけど。。。」
唇を尖らせるのを止めた葉月さんに、桔葉さんは内心で呟きました。
(…呼ぶのは、手伝ってくれている間…限定だけどね。)
作品名:桔葉さんのバレンタイン 作家名:紀之介